『幻の王と夢の呪文 ー中編ー』

 

「どうしかしたのかいっ?!」

 ポップの叫び声を聞きつけたのか部屋に真っ先に飛び込んできたのは、アポロだった。

 賢者の常として攻撃魔法も得意な彼は、城の中で何か騒動があった場合は兵士と同様に対処のために駆けつけてくるのが常だ。三賢者の中で唯一の男性という自負も手伝ってか、彼の行動は素早かった。

 いつでも魔法を放てるように身構えて飛び込んできたアポロだったが、彼を迎えたのはダイの底抜けに呑気な声だった。

「あ、おはよう。
 あのね、ポップがやっと目を覚ましたんだよ!」

 嬉しくてたまらないようにそう告げるダイを見て、アポロは苦笑を浮かべながら肩の力を抜く。

「そうか、それはよかった。みんなが心配していたんだよ、あの魔法を使って以来、君がなかなか目覚めなかったから……」

 そう言いながらポップの方に目を向けたアポロだが、慌ててその目を逸らす。見てはならないものを見てしまったかのような慌てぶりに、ポップはわずかに戸惑う。

「ごめん。緊急時と誤解したとはいえ、許しも得ずに女性の寝室に踏み入ったのは謝るよ」

 わずかに顔を赤らめてアポロがそう言った意味を、ポップはすぐには理解しきれなかった。
 なにしろ、ここにいるのはダイと自分だけ。

 辺りを見回してみれば、ここはポップが自室替わりに使っている客間だし、女性なんていないのに――と思いかけてから、ダイが女の子になったことを思い出した。
 だが、ここまで過剰に恥じらう必要はあるだろうかと疑問を感じてしまう。

 白いワンピース姿のダイには確かにポップも度肝を抜かれたが、ミニスカートとは言え別にそこまで恥ずかしい格好とは言えない。
 よく似合ってはいるし、こんな格好をした女の子なら町でもよく見掛ける――その程度の格好だ。

 まあ、さっきからダイはやけにはしゃいで動き回っていたし、ひょっとしてスカートでもまくれて下着でも見えているのかと、ダイの格好を一通り見直す。
 しかし、その視線は必然的にダイだけでなく、ダイに密着している自分自身の姿も見下ろす格好になった。

 ダイの白いワンピースに紛れて気が付きにくかったが、やはり真っ白で薄地の寝間着が目に入ってくる。
 いつもポップが着ているパジャマではなく、えりぐちをたっぷりと開けている寝間着はやけに薄くて、上等の布は朝の光を受けて半ば透けて見えるほどに薄い。

 そう、寝間着を盛り上げてこんもりと膨らんだポップの胸のラインが、はっきりと分かってしまうほどに。

「いっ!?」

 とてつもない衝撃に、ポップの視線は自分の身体に釘付けになる。何度となく瞬きしたが、幻ではない。
 明らかに、胸がある。

 しかもよくよく見れば、寝間着の裾が大きくまくれ上がって足がむき出しになっているのはポップの方だ。
 その足が妙になまめかしく見えるのに、自分自身で驚かずにはいられない。ただ細くて生白いだけだったはずの足が、どことなく柔らかみをましている感じだ。

(ま、まさか――!?)

 悍ましい想像にくらくらするのを感じながら、ポップはベッドから飛び下りて風呂場へと向かう。

「あ、ポップ?」

 ダイも追っかけてくるが、構ってなどいられない。備え付けてある簡素な風呂場へと飛び込んだポップは、大きな姿見を前にして再び絶叫していた。

「ひょえぇええええええええっ!?」

 白いネグリジェを着た、黒髪の女の子がそこにはいた。否定したくても、身体の線が一目で見て取れるほど薄い寝間着姿では、性別など間違えようもない。

 女の子にしては髪の毛が短すぎる気もするが、いつも身に付けている黄色のバンダナがリボン風に巻かれているせいかそれほど悪くは見えない。

 母親のスティーヌの若い頃を連想させる女の子が鏡の中で目を見張り、わなわなと震えているのが見えた。
 信じられないとばかりに動かす手と全く同じ動きをとる鏡の中の虚像を見ては、もはや認めざるを得ない。

「お、おれも……女になっている……っ!?」

 呟くと同時に、思わずその場にへなへなと座り込んだポップの後ろから、声を掛けてきたのは聞き覚えのない声だった。

「やあ、やっと目を覚ましたんだね、ずいぶんと心配したよ」

 親しげにかけられた声に思わず振り向いたものの、ポップは当惑せずにはいられなかった。

 やけに立派な服を着た、自分と同じぐらい年頃の少年がそこにはいた。キリッとした眉と、凛々しい表情が印象的な少年だ。
 美形だが少し気障ったらしい感じがする所は、初めて会った頃のノヴァを思わせる。

(なんだよ、このハンサムは?)

 反射的にムッとするものを感じつつ、ポップは首を傾げる。が、少年の方はポップのそんな戸惑いにはお構いなしに、ごく当たり前のように手を差し出してきた。

「だけど、そんな所に座り込むのは感心しないな。しかも、そんな薄着で……風邪を引くといけない。
 エイミ」

 ごく当たり前のようにそう呼び掛けた声に応じて、いつの間にやってきたのか三賢者のエイミがポップの肩にガウンを羽織らせてくれる。
 どう見ても女物のデザインのガウンは気に入らなかったが、ごく薄の寝間着姿よりは遥かにましなのは間違いない。

 肌が少しでも隠れるようにできる限り深く襟を合わせ、しっかりと帯を締めながらポップは立ち上がった。それにさりげなく手を貸してくれた少年は、一見短髪に見えるがよく見えれば男にしては長い栗毛を後ろで軽く束ねている。

「気分はどうかな? ぼくの方は生まれ変わったような気分だけれど」

 深みのある榛色の目が、茶目っ気を宿して悪戯に輝く。それを見て、ポップは戦慄と共に真実を悟った。

「あんた……っ、ひ……姫さんかっ!?」

「なんだい、今、気がついたのかい?」

 ポップの狼狽ぶりが楽しいとばかりに、髪をかき上げて笑うその仕草にはレオナがよく見せていたのと同じ、華やぎに満ちている。
 が、以前は女性らしさを感じさせたその輝きは、今は凛々しい少年らしい仕草として嫌味なく彼を輝かせていた。

「だけど、その呼び名は改めてほしいね。レオーネ――それが、ぼくの名前だ。
 でも他ならぬ君だもの、気軽にレオと呼び捨ててくれて構わないよ」

「れ、レオーネって、なんだよ、その男みたいな名前……」

「みたいなじゃなくて、れっきとした男性名だよ。ぼくの両親は子を授かった時、男ならレオーネ、女ならレオナとつけるつもりだったそうなんだ。

 母上の祖国の古い言葉で、百獣の王ライオンを意味する言葉だったらしい。その名の通り王の中の王にと、と願ってくれたんだろうな。
 やっと、その期待に応えられそうだよ」

 懐かしそうにそう語るレオナ……いや、レオーネの言葉を、ポップはほとんど自失して呆然と聞き流す。
 と、そのポップの両手をレオーネは力強い手でがっしりと握り締めた。

「本当に君の魔法のおかげだよ、ありがとう! まったく、君は素晴らしいよ! 君はぼくの――いや、このパプニカ王国の恩人だ、このお礼は必ずするつもりだよ」

(あ……なんか、姫さん、力もずっと強くなったよな……、それにしても美少女ってのは男になると色男になるものなんだな)

 ほとんど魂が抜けかけたような顔で、ポップはぼんやりとそう思う。ぼーっとしているだけに、レオーネに肩を引き寄せられ抱き締められてもほとんど抵抗すらしなかったが、それまでおとなしくしていたダイが急に割り込んできた。

「もーっ、ずるいよ、レオ! ポップを独り占めしたりしちゃ!」

 プウッと膨れてポップに抱きついてくるダイは、その正体を知っているポップの目から見ても可愛らしい女の子にしか見えない。
 そんなダイに対しても、レオーネは男前だった。

「はははっ、ごめんごめん、ダイ。
 でも大丈夫だよ、別に独り占めなんかしたりしないから……そう約束しただろう、ディーナ?」

 優しくそう呼びかけながら、レオーネはポップを開放する代わりに軽くダイを引き寄せ、頬にチュッとキスをする。あまりにも身に馴染んだ色男な行動に、ポップは目をアングリと見開かずにはいられない。
 と、その視線をどう誤解したのか、レオーネはポップに説明しだした。

「ああ、ディーナってのはダイの正式名称だよ。愛称は今まで通りダイでいいとして、正式の場ではやはりそれなりの名があった方がいいからね。
 本名のディーノを女性系にして、ディーナにしたんだよ」

(い、いや、疑問に感じたのはそこじゃねえよっ)

 ほとんど気にさえしていなかった部分を丁寧に説明され、ポップの戸惑いは膨れ上がる一方だ。
 だが、その動揺が収まらぬうちに、またレオーネは話しかけてくる。

「ところで、君の名は、ポプリにするのがいいかな? それとも、お母上にちなんでポプリーヌとか?」

「はぁ?」

 なにやら聞き捨てなら無い言葉が混じっていたような気がして、ポップはしっかりとガウンを着たにもかかわらず寒気を感じる。

「な、なんだよ、それ!? なんで、おれの名前まで……っ!?」

 言うまでもなく、ポプリもポプリーヌも女性の名前だ。わざわざ改名する必要があるだなんて、それは――。

「だって当然だろう? これから君は、ずっと女の子のままなんだから」

「――――――!」

 衝撃が余りにも大きかったのは、逆に幸いだった。ついでに、ダイとレオーネに挟まれた姿勢でいたせいで、倒れずにすんだのも幸運だろう……本人はそんなところまで全く意識が及んでいなかったが。

「あの後、調べて分かったんだよ。君が唱えたモシャトルソは、関わった人間の性別を逆転させる魔法なんだ。
 その効果時間は、永続――しかも、どんな手段を使おうとも絶対に解呪不可能だそうだ」

(マジかよ……っ!)

 叫ぶ声すらなく、ポップは絶望する。
 突き上げる後悔に泣きわめきたいが、あまりにもショックが大きすぎてすぐに行動することもできなかった。

 自分が男ではなくなっただなんて。
 生まれた時の性別が変わってしまった――その衝撃は限りなく大きく、ポップを芯から打ちのめす。
 どうしても震えの止まらないポップの細い肩に、再びレオーネの手が乗せられる。

「その事実を知った時は、ぼくも身震いしたよ。あまりにも突然だったからね……自分の身に降り懸かったことが信じられず、何度も神に祈ったよ」

「ひ、ひめさん……」

 途端に罪悪感が、ポップの中に生まれる。まあ、百歩譲って自分は仕方があるまい。あの呪文を使いたいと強行したのはポップの意思だ、その結果がどんなに満足できないものだったとしても自業自得というものだろう。

 しかし、仲間達はポップに巻き込まれただけだ。
 そう思うと申し訳なくて、なんと言って謝ればいいのかと思いながら顔を上げたポップの目と、満面の笑みを浮かべたレオーネの目が合った。

「本当に信じられなかったよ――この幸運が」

「へ?」

 驚きの余り間抜けな声を上げるポップの目の前で、レオーネは目をきらきらと輝かせている。
 その目の輝きは、嬉しくてたまらない時があった時のレオナの目と、なんの変わりもなかった。

「だって、これでぼくは王子になったんだよ? 王女じゃなくて、王子――つまり、これで能無しの癖に口うるさい女王反対派なんかケチョンケチョンに一掃できるってわけだ! それに結婚だって外交だって、これからどんなに有利になることか!」

 心底嬉しそうに叫ぶレオーネの熱意は、とびっきりのバーゲンセールに出会った時のレオナのそれに匹敵するものだった。

「ま、待て待て待てーいっ、な、何を抜かしてるんだよっ、姫さんっ!?」

 とても我慢しきれずに思わず突っ込むポップに、レオーネはわずかに不快そうな表情を見せる。

「だからレオでいいって言っているのに。
 君にあだ名で呼ばれるのは悪くない気分だけど、もう姫ではないのだからその呼び方だけはやめてほしいな」

「だから、なんであんたはそんなにあっさりと受け入れられるんだよっ!? いいのかよ、それでっ!? いきなり性別が変わったりしたら、問題が起こるだろう、いろいろとっ!?」

 最後はほとんど絶叫となったポップの叫びに、レオーネはフッと余裕たっぷりに笑う。

「なんだ、そんなことか。
 それこそ、今までは魔法かなにかで女装していたとでも言えばすむことじゃないか。

 そうだな、先国王が魔王軍の襲来に備えて王子を王女と偽って育てていたとでも言い訳すれば、周囲は納得させられるものさ。
 なあ、そうだろう?」

 と、レオーネが視線を向けた先には三賢者達が雁首を揃え、神妙な顔で頷く。

「はい。ただ今、先代王妃様の遺言状を密かな作成中です。国王様と違って公式文章がほぼ残されていないので、筆跡の偽造がしやすいですから。
 恐れ多いことですが、私は王妃様から読み書きを教えていただきましたし、字の癖はよく存じ上げています。まず、ばれる気遣いはありませんわ」

 聞きようによってはなかなかとんでもないことをサラッと言ってのけたのは、マリンだった。

 妙に生き生きとしている彼女に比べると、アポロやエイミはやや憔悴したような表情をしているが、それでも彼らはレオナからレオーネに変わってもパプニカ国主の忠実な臣下だった。

 ポップが眠っていた三日間の間に何があったのかは分からないが、少なくともすでに三賢者は納得済みのようだ。

「君達の性別だって同じことだよ、敵を欺くためにわざと男女逆転させた噂を流して混乱を狙ったとでも言えばいい」

「そ、それで通るのかよ……?」

 大胆すぎる言い訳にポップは気が遠くなりかけたが、レオーネは女から男になっても相変わらず大胆不敵だった。

「通るも何も、この通り今のぼくは男なんだ、なんなら服を脱いで証拠を見せてあげようか?」

 悪戯っぽく言いながら、レオーネは自分のベルトへと手を伸ばすので、ポップは慌てて止めた。

「あ、いや、いい。というか、見たくねえからやめてくれ……」

 これが以前のままならいざ知らず、男の身体になった王女の裸など誰が見たいと思うだろうか。

「そうかい? 遠慮しなくてもいいのに。
 まあ――さっき言った通り、モシャトルソは解呪不可能な呪文なんだ、どんなに調べられてもどうってことはないしね。

 すでに次の世界会議でぼく達の性別をきちんと報告するための下準備は進めているし、大臣達への根回しも開始した。心配はいらないよ」

 具体的すぎる手際に、ポップは舌を巻かずにはいられない。
 どこまでも手回しのいい辺りは、男女逆転しても変わりはないようだ。

「で、でも、それでも男と女じゃいろいろと違うことってあるだろ。れ、恋愛とかさ……」

 そう言いながら、ポップはつい心配そうにダイの方を見ずにはいられない。
 レオナは、ダイが好きで。
 今一歩子供っぽすぎてよく分かりにくいが、ダイの方だってレオナを特別な女の子として意識しているのは、明白だった。

 まだ淡く、幼い初恋を自分の呪文で打ち砕いてしまったともなれば、さすがに気が引ける。
 しかし、ダイはまったく分かっていないようにきょとんとした顔をしていた。

「どうして? レオでもレオナでも、大好きなのは変わらないよ。レオもおれのこと、好きだって言ってくれたし」

 揚げ句、満足そうにそう言ってのけるのだから、ポップとしてはのけ反るしかない。

「変わらないって、そこは大違いだろーがっ!? よく平気な顔していられるな、おまえっ。戸惑ったりとか、嫌だとか思わないのかよ!?」

 八つ当たりにも等しいが、自分内の衝撃からまだ立ち直れないポップにしてみれば、この状況で平然としていられるダイの気がしれない。
 だが、ダイはほとんど気にさえしていない様子だった。

「そりゃ、いきなりおっぱいができて、ちんちんがなくなったのはびっくりしたけど」

(いや……もう少し言葉を選べよ)

 心の中でそう思ったものの、ポップはそれを口に出す気力までは湧かなかった。
 外見は結構美少女なのにも関わらず、言動はダイそのままだというギャップに、めげてしまいそうである。
 だが、ダイは嬉しくてたまらないように叫ぶ。

「でも、レオが約束してくれたから! これで結婚するのに問題はなくなったし、レオともポップともずっと一緒にいられるからって!」

「はぁいぃっ!?」

 他人事と思って聞いていたらなにやらとんでもない話を聞いた気がする――と、ポップが脳内で反芻するだけの時間すら、ダイは与えてはくれなかった。

「レオから聞いたけど、結婚って男と女でするものなんだってね。
 普通は男も女も、一人だけしか結婚できない。それに、男と男も結婚できないんだってね。
 ポップ、知っていた?」

(………………………………そりゃ、常識だからな)


 ごくごく当たり前の常識以前の問題を、さも大発見したかのように語るダイにそこはかとなく絶望しつつ、ポップはとりあえず力なく頷いた。

「あ、ポップも知ってたんだ。
 でも、王様だけは特別なんだって。お姫様だと一人の男としか結婚できないけど、王様は、好きな数だけのお嫁さんと結婚できるんだって! 
 おれ、知らなかったよ!!」

 微妙に間違っている知識ではあるが、完全に不正解とも言えない意見に、ポップは頭を抱え込みたくなった。

(確かに、そういう話は聞くことは聞くけどよ〜)

 王とは、絶対の存在だ。
 世継ぎを得るために――その大義名分の元に、複数の妻というか王妃だけでなく側室を設ける王は少なくはない。

 幸いにもと言うべきか、今の王様達はほとんどがモラルが高いというべきか愛妻家と言うべきか、表立った側室などいやしない。
 しかし聞いた話では、昔は数十人どころか数百人の女性を側室として召し抱えた強者の王もいると言う。

 ある意味で男の夢ではある話だが――女性的にはそれほど歓迎できる話ではないのではないかとは、少年のポップでさえ分かる話だ。
 が、女の子となったダイはこれ以上嬉しいことはないとばかりに言葉を続ける。

「だから、レオナとじゃ無理だけど、レオとだったら、おれとポップが一緒に結婚するのはできるんだって! そしたら、オレ達、一生一緒にいられるんだよ! 
 すごいと思わない、ポップ!?」

(――――確かに、すげえよ……その発想が!)

 男とか女とかは関係なく、ダイのぶっとんだシンプル思考にポップは絶句してしまう。 もはや、理解など飛び越えてすでに異次元までかけ離れたかのように思えるその発想に、ポップは震撼せずにはいられない。

 勇者という存在は常人とは神経の太さが違うものなのか、それとも自分の感覚が繊細すぎるのだろうかとポップは悩んでしまう。しかしそんなポップに対して、ダイはすでに結婚という未来を現実のものとして受け止めているらしい。

 そして、そんなダイの――どう考えたって騙されているとしか思えない歪んだ結婚観を保証するように、レオーネが優しく頭を撫でる。
 ボサボサとはいえ、男の子だった時に比べると格段に柔らかそうに見えるその髪を撫でられて、ダイはこの上なく嬉しそうに笑った――。
     

                                    《続く》
 

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