『もう一つの救済 6』

 

(諦めるもんか。こんなところ、絶対に逃げ出してやる……!)

  あれから何時間経ったのか──。
 薄汚れた地下牢の床に力なく横たわりながら、ポップが考えていたのはただ、それだけだった。

 理屈では、今の自分の状況が最悪に近いとは分かってはいる。
 ここがどこかはポップは知らないが、敵の居住地であることは間違いがない。こんな地下牢があるぐらいだ、人間の城並に広い上に設備や敵の頭数のそろっている場所と判断して間違いないだろう。

 おまけに、ポップは手足を拘束されている上、魔法も封じられてしまった。
 それも魔法力を徐々に抜かれていくと言う、魔法使いにとっては致命的な方法での封印だ。ただ魔封じの魔法をかけられたのなら時間が経てば回復するし、魔法を封じる道具で封じられたのなら、それさえ外せば魔法を使える。

 だが、魔法力そのものを抜かれてしまってはどうしようもない。
 ただでさえ魔法力をほぼ使いきってしまっていたのに、回復が許されないまま魔法力を抜かれ続けるのは、正直辛かった。

 魔法力と同時に体力も失ってしまい、今のポップは座っているのさえ苦しい。縛られているから横になるのも大変だったりするのだが、それでも横になっているのは座るよりはましだからだ。

 だが、それでもポップの中の決心は揺るがなかった。
 ヒュンケルが自分を殺そうとせず、また、人質として積極的に使う気もないのなら、ポップが考えるべきことはただ一つ。

 なんとしてもここから脱出して、仲間達と……ダイとマァムに、合流するのだ。

(あいつら……心配してるかな?)

 ダイとマァムの無事を、ポップはあまり心配してはいなかった。あの二人なら大丈夫だと、心の底から確信しているからだ。
 ガルーダがダイとマァムをあの後どうしたかは知らないが、ポップはすでにクロコダインを信用している。

 命を懸けてまでダイを助けようとしたあの義理堅い男なら、ガルーダに何を命じたにせよ、助けた人間を安全な場所まで連れて行ってくれただろう。

 二人ともヒュンケルの戦いでダメージは負ったが、自分よりも年下とはいえ、ダイの並外れた強さをポップは誰よりもよく知っている。それにマァムは治癒魔法を使えるし、しっかり者だ。

 ヒュンケルと距離をおき、態勢を立て直すことができるのなら問題はない。
 問題なのは、その後だ。

 おそらく……ダイもマァムも、ポップを助けようと思って行動を起こすだろう。正義感が強く友達思いのあの二人が、ポップを見捨てて先を急ぐとはちょっと考えにくい。

 だが、今回に限ってはそれはあまり嬉しくはない。
 いや、感情的には嬉しいと思うが、この場合はダイに助けにきてほしくはない。
 ヒュンケルの狙いは、ダイ一人なのだから。

 アバンを恨み、その憎しみを正義そのものに向けたヒュンケルは、ダイを殺すことに囚われてしまっている。

 なのに、ダイの方はヒュンケルと戦うことにためらいがある様に見えた。ただでさえヒュンケルの方が実力が高いのに、戦いに迷いを持っている様では致命的だ。

 それを思えば、ダイとヒュンケルが再び戦うようなことになるのは、賛成できない。

 ましてや、自分がその引き金になるなんて真っ平御免だ。自分のせいでダイがヒュンケルに戦いを挑むことになるかと思うと、いてもたってもいられない。

 幸いにもというべきか、ヒュンケルは思っていたよりもフェアな精神の持ち主ではあるようだ。クロコダインとの戦いの際、ブラスを人質にするように裏で糸を引いていた魔王軍の連中とは違うらしい。

 ブラスと同じように操られてダイやマァムの足を引っ張るぐらいなら、いっそ自分で自分の始末をつけた方がいいと一度は思ったが、ヒュンケルにその気はないのは朗報だった。

 とは言え、たとえおびき寄せるだけだろうともむざむざと利用される気など、さらさらなかった。
  なんとしてもここから逃げ出さなければ──そう考えていた時のことだった。

「もし。大丈夫ですか?」

 そう呼び掛けられてから、ポップはようやく誰かが牢屋の前に立っているのに気が付いた。
 木の扉で閉ざされたこの牢屋はドアの一部に窓替わりの鉄格子がついていて、扉を開けずとも外から内部の様子を窺える仕組みになっている。

 もっともそれは、中から外を見ることもできるという仕組みでもある。牢屋の外側から自分を覗きこんでいる人影に気が付いた途端、ポップは悲鳴を上げる。

「ひぃえっ!?」

「これはこれは失礼を。急に話しかけて驚かせてしまったようで、申し訳ありません」

 捕虜の少年に対しても至って生真面目に、朴訥な印象の口調で丁寧に謝罪するが、ポップは急に話しかけられたことに驚いたわけじゃない。
 ポップを仰天させたのは、その男の姿その物だ。

 服装こそはまともとはいえ、不気味な土気色の肌の生ける屍……初めて見たわけじゃなくても、そんな相手にいきなり話しかけられれば誰だって驚く。
 臆病さでは定評のあるポップにしてみれば、不死系怪物など見るのも怖くてたまらない。

 アバンの授業では、不死系怪物は大半が本能だけを残して生物を闇雲に襲う、恐るべき怪物になってしまうのだと習った。

  しかし、今、ポップの目の前にいる腐った死体──ヒュンケルがモルグと呼んでいた彼は、やけに落ち着いた物腰だし、明らかな知性を感じさせる口調で話しかけてくる。

「それではもう一度お尋ねさせてもらいますが、大丈夫ですか?」

「これが……平気な様に見えるのかよ……!?」

 苛立ち混じりに言い返しながら、ポップはモルグを睨み返した。しかし、モルグは飄々とした態度を崩さない。

「少なくとも、私達の仲間にはなられていない様には見えますね。安堵致しました」

 そう言いながら檻を開けたモルグは、小型のワゴンと一緒に中に入ってきた。

「さて、あらかじめ言っておきますが、おとなしくしておいてくださいよ。
 私はヒュンケル様のお言いつけ通り、あなたの手当てをするだけです。別に危害を加える気はありませんから、余計な抵抗はしないでください」

 しつこい程にそう念をおすのは、最初にポップがここの牢屋で目覚めた時に思いっきり抵抗し、わめき立てて暴れたせいだろう。
 なにせ寝起きにいきなりゾンビに囲まれていたのだ、襲われるかと思ってポップも全力で抵抗してしまった。

  ──まあ、その結果、逃げられるどころか拘束が厳しくなっただけなので、ポップも今となってはあれは失敗だったと思ってはいるが。

「……分かったよ」

 頷いたポップは、実際にモルグに縄を解かれてもおとなしくしていた。
 見た目ではポップよりもずっと小柄で、しかも腐っているせいで強く見えないとは言え、不死系怪物独特の頑強さはバカにできない。

 なにしろ痛みも感じない上に、その肉体は見た目以上に屈強だ。抵抗しまくった結果、ポップはモルグの体力や腕力が自分以上だとはっきりと悟った。
 暴れたところで、また、力ずくで抑えつけられるだけだろう。

 そう思っておとなしくしていると、モルグは意外なぐらい丁寧に、きちんと手当てをしてくれた。
 大半がかすり傷であり、ポップが暴れたせいで多少出血した程度の軽傷にもかかわらず、いちいち真面目に薬草を当て、包帯を巻いている。

 その後でトレイに乗った食事まで差し出されたのは、驚きだった。
 ざっくりと切った大きめのパンに、適度な薄さに切った干し肉が何枚かまとめておかれ、チーズが一塊に水を添えたその食事は、正直な話、たいして上等な食事とは言いがたい。

 質よりも量を優先した、保存食的な食事だ。
 だが、捕虜に対しては十分過ぎる厚遇だろう。
 驚いたせいですぐには手出しをしなかったポップを誤解したのか、モルグが丁寧に告げる。

「ご心配なく。この食事は、ヒュンケル様の物と同じです。別に毒など入っておりませんよ」

 見れば、そのワゴンにはもう一組トレイが乗せられていた。それはまさに、ポップのものと全く同じ物だ。

(……なんだよ、あいつ、案外と粗末なものを食ってるんだな)

 内心そう思いながら、ポップは縄が解かれたばかりの手足を擦る。血が通いだした手足にちりちりとした痛みを感じるが、不自由な姿勢から開放されたのは嬉しかった。

 手足が自由ならば、少しは可能性が見えてくる。モルグに怪しまれない程度に部屋の中を見回しながら、ポップはダメで元々と思い訴えてみた。

「なぁ、この首輪も外してくれよ。これ、重くって、喉が詰まって、しんどくってたまらねえんだよ」

「さようでございましょうな。ですが、私の一存で外すわけにもいかないのですが……」

 そう言うモルグの口調には、迷いが感じられた。不死系怪物なのにずいぶんと人間臭いというか、優しさの感じられる怪物だ。思えばこのモルグという怪物は、ポップに対してかなり同情的な発言が目立っていた。
 その人のよさに付け込むように、ポップはわざと大袈裟にまくし立てる。

「飯を食う間だけでもいいって! これだと喉が苦しくて、ろくに食べれねえよ!! おれが飢え死にしちまってもいいのかよ、そしたらおまえだって困るんじゃねえのかよ!?」

 ここまで騒ぐだけの元気があれば決して飢え死にする危険性はないだろうし、また、捕虜にしては随分と生意気な態度である。だが、人の好い不死系怪物はポップのこの言動を咎めずに本気で悩み込んでいる様子だった。

「うむむ……」

 モルグは何度もポップを見返した揚げ句、しぶしぶのように懐から鍵を取り出した。

「……いたしかたありませんな、食事を食べれずに衰弱されても困りますし。
 でも、いいですか、食事が終わるまでの間だけですよ?」

 カチリと言う小気味のよい音と共に、首輪が外される。正直、躍り上がりたい気分だったが、なんとかそれは堪える。ついでに、すぐさまここから脱出したい気分も押さえ付けた。

 魔法さえ使えれば即座にモルグに攻撃をしかけて逃げ出せるが、生憎今のポップはほとんど魔法力が空の状態だ。
 逃げるためには、もう少し策を弄する必要がある。

 粗末だがボリュームだけはある食事に目をやり、ポップは無意識に生唾を飲み込んでいた。

 考えてみれば、船を下りてからというものの食事を全く取っていない。育ち盛りのポップにしてみればいい加減空腹を感じていたところだし、すぐにでもかぶりつきたいという誘惑に駆られる。

 だが、ポップは敢えて食事に手を出さず、ちらちらとモルグに目をやった。案の定、モルグはポップのその意味ありげな視線に気がついた。

「おや? なぜ、お食べにならないのです?」

「んなこと言ったって、見張られながらじゃ食いにくいんだよ!! 飯ぐらい、ゆっくり食べさせてくれたっていいだろ!?」

 そう怒鳴る口調が必要以上に強く、噛み付く様なものになったのは、ポップの不安感の裏返しにすぎなかった。
  モルグをここから追い払いたい──その気持ちが強かったからとはいえ、捕虜にあるまじき暴言である。

 調子に乗るなと看守が怒りだしてもなんの不思議もない態度だったが、意外にもモルグは動揺した。

「さ、さようですか、私の様なゾンビが側にいたのでは食欲がなくなるのも道理というもの、これはうっかりと失念しておりました。
 それでは、少し席を外しましょう」

 妙に肩を落とし、そそくさと逃げ出す様にその場を立ち去るモルグに、かえってポップの方が罪悪感を抱いてしまう。

(あー、……なんか、悪いこと言っちまったのかな?)

 ポップにしてみれば、見張りを追い払いたいだけのつもりだった。たとえ相手がモルグではなく、ヒュンケルだったとしても似た様な言動を取っていただろう。

 確かに不意打ちで見るには驚く顔ではあったが、怪物が側にいるぐらいでポップは食欲を失ったりはしない。臆病なところはあるが、ポップはそんなに繊細な神経は持ち合わせてはいない。

 襲われたりするなら論外だが、単に側にいるだけならば気にはならない。
 ダイのいた島でも怪物達が周囲にごろごろいて最初は驚いたが、食事の時間になる頃にはポップはすっかり慣れてしまったのだから。

 しかし、モルグには気の毒だが彼を追い払えたのはポップには都合がよかった。彼の姿が見えなくなるや否や、ポップはそれまでとは打って変わった猛烈な勢いで食事にかぶりつきだした──。






「何かあったのか?」

 ヒュンケルがそう聞いたのは、食事がほとんど終わりかけた頃のことだった。
  モルグの様子がいつもとは違う──それは、ヒュンケルの目には一目瞭然だった。

 常に顔色が悪い不死系怪物にも、表情の変化は存在する。動物に常日頃から接している者が個々の動物の見分けができる様に、ヒュンケルもまた不死系怪物については詳しい。

 ましてやモルグは執事として常にヒュンケルの身近にいる存在だ、彼の些細な変化は目に付きやすい。
 ヒュンケルが食事をしている間、給仕として側に控えるのもモルグの役割の一つだが、今日の彼はやけに元気がなかった。

 そうおしゃべりな方ではないとはいえ、モルグはいつもならば無口なヒュンケルに対して食事の合間に話題をふってくるぐらいの気は利かせる男だ。
 しかし、今日のモルグはやけにしょんぼりとして元気がなく、気が散っている様子だった。

 話しかけられてからようやく本来の役割を思い出した様に、ヒュンケルの方に顔を向ける。

「い、いいえ、特に何かあったわけではありませんが……」

 そう否定するモルグの言葉をそのまま受け止めず、ヒュンケルは言外に込められた意味を察知する。

「特別なことではなくとも、いつもとは違うことがあったようだな」

 そう言い置いてから、ヒュンケルは報告しろと命じる。
 だが、それを聞いてモルグはなぜか嬉しそうな表情を見せた。

「……お気遣いありがとうございます。ヒュンケル様はお優しいですね」

 しみじみと呟くモルグの言葉に、ヒュンケルはどう答えていいか分からずに、口を閉ざす。
 こんな風に言われるのは、慣れていない。

 そもそも、礼を言われること自体心外だ。ヒュンケルがモルグの支配者である以上、なにか事が起きれば報告を受けるのは義務であり当然の権利だ。ただそれだけのことにも関わらず、嬉しそうな表情を見せるモルグの存在は、時々ヒュンケルを戸惑わせる。

 子供の頃から復讐に囚われ、人間らしい感情を捨てようと勤めてきたヒュンケルからみれば、モルグは驚く程に人間っぽく感じられる。
 だが、それは不思議と不快ではなかった。

「ですが、本当になにがあったというわけではないのです。ただ……やはり私の様なゾンビが側にいては、普通の人間という者は食欲を無くすものなのでしょうね」

 しょんぼりと肩を落としながら零すモルグの愚痴に、ヒュンケルが思い当たったのは一つだけだった。

「あの小僧か?」

 捕虜の身でありながら、妙に開き直った強さを感じさせる魔法使いの少年を思いだしながらヒュンケルは少しばかり眉をひそめる。
 たかだか人間の小僧の戯言など気にする必要もないと言いたいところだが、実際にポップと顔を合わせたヒュンケルにはそう言い切れなかった。

 一見ただの平凡な少年な様に見えて、ポップの減らず口は妙に引っ掛かるというか、胸に食い込んでくる鋭さがある。

 ヒュンケルでさえそうなのだから、人が好く、人間味を多分に残すモルグがポップの言葉を聞き流せなかったのも理解できる。
 だが、理解はできてもなんとも言えずに不愉快ではあったが。

「それであの小僧は、妙な真似をしていないだろうな?」

「ええ、今のところは。魔封の鎖が重くて喉が詰まると訴えるので一時的に解いてやりましたが、おとなしくしておりますよ」

「──封印を解いたのか?」

 ヒュンケルの目付きが、一層険しさを増す。だが、彼はそれを自覚はしていなかった。

「ああ、ご心配なく、食事が済んだのなら再び封印しておきますから。
 ああ、そろそろ様子を見に行かないと」

 そう言ってから礼儀正しく一礼し、立ち去ろうとした忠実な部下を、ヒュンケルは引き止めた。

「いや、待て。オレが行く」







(全く……! オレとしたことが、あんな雑魚をいちいち気にするとは)

 苛立ちを感じながら、ヒュンケルは地下牢へと向かっていた。
 根っからの戦士であるヒュンケルにとって、アバンの剣技を引いたダイならともかく、魔法使いのポップは到底まともに戦う相手とは見なせない。

 戦士の大半がそうである様に、ヒュンケルもまた、魔法使いという職業を軽んじて考えていた。
 魔法こそ使えても体力がなく、打撃攻撃に極端に弱い魔法使いは戦士にとっては戦いやすい相手だ。

 ましてや魔法を弾く鎧を身に付けたヒュンケルにとって、魔法などなんの意味もない。文字通り、ただの雑魚だ。
 本来なら構う価値など、ない。

 だが、そう言い切れない直感が、ヒュンケルを苛立たせていた。
  ただの雑魚だと思って油断して扱えば、手酷い反撃を食らいかねないような──アバンの弟子ということで過大評価しているのかもしれないが、ポップにはそう思わせる何かを感じてしまう。

 だからこそモルグに任せっきりにするのではなく、自分の目で確認しておきたかった。この苛立ちや妙な予感はただの買いかぶりであり、あの魔法使いはただの小僧にすぎないと。

 逃げることもできない癖に、ただ、負け惜しみで看守に文句を言っているだけだと分かれば、無視をするのもたやすくなるだろう、と。

(……あの小僧の口車に、乗せられない様に気をつけなければな)

 そう考えながら地下牢に向かったヒュンケルだったが、その決意は見事に空振りとなった。

「……!?」

 鉄格子越しに見える範囲に、ポップの姿が見えない。
 それだけで嫌な予感がした。
 この石造りの牢は木の扉で封じるタイプなだけに、扉の小さな鉄格子から見える範囲には限りがある。

 扉のすぐ下や部屋の隅など、外からパッと見ただけでは目が行き届かない死角が存在するのである。
 だが、扉に手を掛けてヒュンケルの疑惑は確信へと変わった。

(……逃げられたか)

 厳重な鍵が掛かっているはずの扉は、何の手応えもなく軽く開く。無人の牢屋の床を見て、ヒュンケルは奇妙な物が描かれているのに気がついた。

 床の埃に刻まれているのは、人一人が立てる程度の大きさの円だった。見事なまでに丸く描かれているそれは、並の戦士にとってはただの落書きにすぎなかっただろう。

 だが、幼い頃に勇者であるアバンに指示していたヒュンケルにとっては見覚えのあるものだった。
 簡素な物だが、それは魔法契約の際に使用する魔法円に間違いない。
 それは、ポップがこの場で何らかの魔法契約を済ませたことを意味する。

「あの小僧め……!」

 込み上げてきた怒りに、ヒュンケルは無意識に歯がみする。そして、その怒りのままにヒュンケルは声を張り上げた。

「誰かいるか!? 脱走だ、出口を封鎖しろ!」
                                                        《続く》


                                                                                                      

 

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