『四界の楔 ー再会編 1ー』 彼方様作 |
・ポップが女の子です。 この四点にご注意の上、お楽しみくださいませ♪
「ポップ、ヒュンケル」 「あれは」 「私が来た時には、もうあの状態だったわ」 最初から見ていたレオナにも、こうなった過程の説明は出来ても、その原因までは解らないらしい。 「闘気流だな」 「ああ。二人の闘気がぶつかって起きた現象だ」 だが、尋ねた当の二人が答える。 「解るの?」 「真竜の戦いって言ってな、両者の実力が高いレベルで拮抗していた場合に、稀に起こる現象だ」 “ヴェルザーとバランの戦いでもあったって言ってたか” 説明しながら、ふと思い出す。 “て事は、今の二人はそれに近いレベルになってるって事か” 実際の所、ポップもヴェルザーの正確な戦闘力は知らない。知りようがないからだ。だがヴェルザーとバーンが長い間、危ういバランスで魔界の均衡を保ってきた事は事実。 “なら、ダイはこの2〜3日でそこまでレベルアップした?” これも竜の騎士の特性なのだろうか?敵のレベルを知る事で、それに応じることが出来る、と言う。だが、それは何処かで酷い反動が出るような気がしてならない。 “止めた方が良いのか?いや、でも…” ハドラーの望みはともかく、ダイはどうだろう。 “男…ね” 何度もダイにされた告白。 “いや、今考える事じゃないだろ” 先刻のヒュンケルの告白も相まって、“そっち”方面に流れそうになった思考を押しとどめる。 「だから、決着は一瞬の筈だ」 「ポップ君も同じ意見?」 「ああ…けど、ダイの方が不利だ」 あの空間にいるだけで体力は削られて行く。あの場は一種の異空間だ。 “どうする…?” メドローアなら、あの熱エネルギーの塊りを全て吹き飛ばせる。いや、ハドラーの意識がダイ一人に向かっている今、うまくすればハドラーもろとも、も不可能ではない。 “ああ、これが駄目なのか” ダイの自分への不満。 「―――姫さん、これはダイも望んだ事か」 「ええ。避けられない、避けちゃいけない戦いだって言ってたわ」 「そう、か」 ポップはふ、と力を抜いた。 「ポップ君」 「甘いとは思うさ。バーンとの決戦を考えれば、余計な一戦だとも。だけど、それがダイの意志なら」 「そうね。それにきっとダイ君の魂の力は…」 ポップの魂の力が“勇気”なら、「勇者」であってもダイの魂の力は別のものとなる。 “純粋、ね。確かに俺にはないな” 四人が固唾を呑んで見つめる中、事態が大きく動く。 “ノヴァとの特訓で、何を身に付けた?” やれるだけはやったと言っていた。 「動くぞ」 ヒュンケルが小さく呟く。 「…ストラッシュ・クロス」 ポップも理論だけは知っている。だがだからこそ、その難易度の高さも知っている。それを僅か数時間でものにしたと言うのか。 “竜の騎士…戦いの申し子、か” 余りそちら側に傾いて欲しくはないのだけれど。 その様子をハドラーも見ていた。 ならば余計に、自分はただの一撃で敗れる訳にはいかない。 “今更だ” 自分が宿敵として選んだのはダイで、それは今も変わらない。ただ自分の中に僅かにある戦士以外の部分が、人間としては少々特異な存在であるポップに向かっているのだ。 一瞬後、ハドラーは雑念とも言えるその思いを振り払った。 「ハドラー…!」 ストラッシュ・クロスを受け、更にあのエネルギーのダメージも全て受けたにも拘らず立ち上がったハドラーに、驚愕の声が上がる。 「ダイ」 「まだ…終わってない」 「それは…だけど、お前」 ダイにも解っている筈だ。いや、こう言う事に関しては、自分よりダイの方が遥かに敏感な筈なのだ。 「解ってる。でも、それはおれだって同じだ」 いや、背負っている思いの大きさは、寧ろ自分の方が上だ。 「ポップ?」 「いいさ、行って来い。回復魔法の使い手が三人いるんだ。死にさえしなきゃどうとでもしてやるよ」 我儘とも言える、自分の意地・意思を認めてくれたポップにダイは小さく微笑った。 「そんな事になる訳ないだろ」 「ああ…『お前』の戦いだ。貫け!」 「うん!」 ポップの後押しを受けて、ダイは飛び出した。 b ポップの隣にヒュンケルが立つ。 「何だよ」 「止めたかったんじゃないのか?」 「否定はしない。けど、それをやったら俺は『勇者の魔法使い』なんて言えなくなる」 そう言いながら、漆黒の瞳には不安と心配が浮かんでいる。 「ポップ?」 「あいつの成長スピードって凄いよな」 先刻のストラッシュ・クロスもそうだが。 「最初は俺のサポートがなきゃ使えなかったのに」 ふと浮かんだ柔らかな表情に、逆にヒュンケルはどう反応していいか解らなかった。あれはヒュンケルにとっては、黒歴史の一部だ。 「――――待つのか」 驚きを含んだ小さな呟きに、ヒュンケルも思考を現実に戻す。 “男の一騎打ち…これが、そうなのか” 理解出来るような、出来ないような、不可思議な気持ちになる。 “初めに会った頃のまま、だったら…心置きなく憎悪も軽蔑も出来たのに” 一体、何がどうなって、こんな尊敬にも値するような「男」になったのか。 “俺の言った事がどうとか言ってたけど” それはあくまできっかけの一つで、最大の理由はやはりダイに違いない。ハドラーにとって「勇者」とは、それだけ拘る相手の筈だ。 “ダイ…” アバンの正統な後継にして、戦闘力のみに関して言えば既にアバンを越えている彼。 “ギガブレイクを撃つのか” 剣技ではバランの最強の技だった、それ。ダイにとっては父の遺産ともいえるもの。 ―――――――勝負!
|