Chapter.5 ベリアルの大鎌

 

「ふうーっ、いい気持ち。ほら、ミュアも浴びてみろよ」

「やめてってば! ボクはキミと違って、魂を売ったわけじゃないんだからねっ、再生の川の水もただの水に過ぎないのっ」

 ふざけて水を跳ね返すと、ミュアは大袈裟に跳びずさった。
 へいへい、どーせぼくは悪魔に魂を売った人間ですよ。
 しかし、魂を売るのも悪いことばかりじゃない。そのおかげで、体力を消耗しても水浴びだけで回復できるんだから。

「しかし……魔界に来てからずいぶん経つのに、ちっとも日が沈まないし、おなかも空かないなあ。これも、魂を売ったせいかな?」

 物は試しと聞いてみると、ミュアはスラスラと答える。

「魔界ではもともと太陽もないし、朝も夜もないもの。言わば、時間の止まった世界なんだ。だからおなかも空かないし、成長することもないんだ」

 便利と言えば便利だけど、味も素っ気もないなあ。
 育ち盛りのぼくとしては、やっぱりごはんは三度三度食べたいっ。それに、これ以上成長しないなんて冗談じゃないや。やっぱり、魔界より現実の人間界の方がいいっ。

「ミュアー、次に行こう……あれ、どこにいったんだい?」

 水から離れた場所にいたはずのミュアは、いつの間にか浅瀬の石の上に下りてきていた。
 ちょこんと座り、しきりに何かやっている。

 前足を水の中に入れようとしているらしいけど、先っちょが少し浸かっただけで慌ててひっ込め、濡れた足をしきりに振る。
 ……なにやってんだか。

 どう見ても楽しんでいるとか、遊んでいるっていう感じじゃない。近づいて見ると、水の中に光るコインが落ちていた。

「やった、お金だっ!」

「ちぇっ、こっそり拾って恩にきせようと思ったのに」

 ぼくがコインを拾いあげると、ミュアが悔しそうにブツブツぼやく。勝手な奴! 数えてみると、600Ψもあった。
 ラッキー、ぼくの魂分よりも多いぞっ?

 ちょっとなさけないけど、この際プライドよりも実用第一!
 なんせ命を懸けて必死で戦っているのに、お金なんてさっぱりと手に入らないんだもん。別にお金お金とさわぐ気はないけどさ、実力が不足してる分、せめて協力なアイテムの助けくらい欲しいもんね。

「前に使った分と合わせて、650Ψか。これなら、何かいい物が買えるかもしれないな」


 と、いうわけでぼくは魔界商人の店に向かった。

「あれ?」

 真っ先に向かった初心者用の店は、なぜか『本日よりしばらく休業』の札が下がっていた。

「なんだあ、あのお姉さんに会いたかったのに」

「……インディは、女の子なら誰でもいいんだね」

 ミュアがジト目でぼくを睨む。
 ふんっ、いいじゃないかっ!
 とりあえず中級店に向かうと、異国風の衣装を着た脂ぎった中年男が(うげっ)揉み手をしながらぼくを向かえてくれた。

「よくいらしてくれたのコトね。当店はワンランク上の魔術師を目指す方々のための、品ぞろえがしてアルよ」

 ワンランクねえ?
 その割には、売っているものに大差は見られない。

 《聖水………………汚れた大地を清めるに効あり 200Ψ》

 これなんて、初級店でも売ってたっけ。値段が倍になってるけど。
 ぼくは並んでいるものを、端から順番に見初めた。

 《破邪の槍…………毒蛇退治に必携       250Ψ》
 《猫目石の指輪……他人をたぶらかすのに効あり 250Ψ》
 《青玉石……………混乱より身を守らん     500Ψ》

「あっ、ボクの首輪っ」

 突然、ミュアがすっとんきょうな声をあげる。

「本当だ。……でも、確か、隣で売ってたんじゃなかったっけ?」

「お隣がしばらく店を閉めるアルよ。だから、うちで置くことにしたアルね」

 なぜか値段と効果が違っている。それにしても、高いなー。

「ねえ、インディ、買ってよ。あれはアザゼル先生がボクに特別にくれたんだ。買い戻してよ、お金拾っただろ?」

「ええ? でも、ぼくは槍が欲しいな。戦いになにかと便利だし」

「何言ってるんだよ、キミは魔術師だろ、戦いに武器なんて必要ないじゃないかっ。 お金、ボクが見つけてやったんじゃないか。ねえってば!」

 ミュアが背伸びしながら、ぼくにしがみつく。なんだって、首輪、首輪ってうるさいんだ?

 ――あのコは、あなたの行動を邪魔するだけ……そして、必ずあなたを裏切るわよ  
 ふっと、ブローケルの言った言葉を思い出す。

「なんだよ、そんなに嫌なの。そんなら、もう、いいよっ」

 ぷいっ、とミュアがそっぽを向く。よっぽどご機嫌ななめなのか、尻尾の先までけばだたせているや。

「嫌とは言ってないだろ。まだ、なんにも言ってないしさ」
 
なんせ考えていることが考えているだっただけに、なんかやましくて、ついつい言い訳してしまう。けど、ミュアはつんとしたまま不機嫌にいう。

「目は口ほどに物を言い――っていうだろ。少しぐらい騒いだからって、そんな化け物でも見るような目で見なくったっていいじゃないか」

「え……っ?!」

 ぜ、ぜんぜん意識してなかったけど、ぼくはひょっとして、ミュアを……?。

「んな、バカな!」

 冗談じゃない、ブローケルが死に際に言った台詞なんかに、惑わされるもんか。

「おじさん、これ下さいっ! はい、500Ψっ」

「ま、まいどあり、アル。それにしてもお客さん、凄い気迫アルね」

「インディ、別に無理してまで買って、とは言ってないけど……」

 ミュアがやつにしては珍しく、遠慮がちな台詞を言ったけど、ここで買わなかったら、まるでぼくがミュアを疑っているみたいで、後味が悪いじゃないか。

「いいんだよ、ぼくは赤丸つきレベルアップ中の魔術師なんだから。アイテムや、武器なんかなくったって、なんとかなるさっ」

 いいながら、ミュアの首に首輪をはめてやる。
 目と同じ色の首輪は、ぴったりとよく似合っているけど、さすがに褒めてやるほど寛大な気分にはならなかった。――フッ、口で言うのと同じく魔力も増大してくれれば、なーんの不安もないんだけど。

「行こうぜ、ミュア。三番目の魔物退治だ」

 

 

 

 滅びの大地を目指して進む。

「墓場みたいだね」

 ミュアがひげを震わせて言った。
 灰色に輝く不気味な空の下に、一面に広がる湿った土の領域。木々は立ち枯れ腐った根をさらし、人とも動物とも知れない骨に絡みついたまま腐臭を漂わせている。

 ああっ、ぼくは青い空に青い海、元気いっぱいの海水浴客に、おいしそうな焼きトウモロコシの匂いが好きだっ!!

「インディ、何ブツブツ言ってんの? ほら、変なものが見えるよ」

「……あれは?」

 大きな石が積み重なっている。先史時代の墓(ドルメン)だ。
 近寄ろうとした時、ものすごいうなり声がした。

「ミュア?!」

 何かを感じとったのか、ミュアは警戒体勢を取っていた。
 背中を弓なりにして、行く手の地面に目を当てている。尻尾がいつもの3倍にも膨らんでいる……なにか、いるんだ!

「うわぁっ!!」

 いきなり土が跳ね上がったっ。
 猿ほどの大きさのものが、土中から飛び出す。だけど、猿なんかじゃないっ。

 腐った土と同じ色で体は皺だらけ、おまけに耳は大きく尖り、三本しかない爪には長いかぎ爪が生えているっ。
 間違ったって、こんな猿なんかいないぞっ!

「小鬼!」

 ミュアが叫ぶのと同時に、ぼくはブーメランを投げつけた。
 命中!
 だが、相手は一匹じゃなかった。

 次々に土を跳ねあげて、長いかぎ爪をふりたてて、群がりよってくるっ。
 続けてブーメランを投げようとしたけど  すぐにブーメランが役に立たないことが分かったっ。
 こんなに近づかれちゃ、投げたくっても投げられないっ。

 結局、蹴とばしたり放り投げたりするしかなかった。だけど、いったい何匹いるんだっ?!
 次から次へと沸いてでてくるじゃないかっ!

「インディっ、後ろっ! ああ、もう、鈍いなあっ、右もっ」

 ミュアの声が上の方から聞こえる。…………くそ、一人だけ安全な木の上に逃げたな。 ああーっ、やっぱり首輪なんか買ってやるんじゃなかったっ!

 左右から、小鬼が歯をむき出して躍りかかった。かろうじて、一匹はかわしたけど、もう片方に肩をつかまれた。
 細い腕をつかんで力任せに引き離し、そのまま地べたに叩きつけた。

「くっ!!」

 けど、かぎ爪が深く食い込んでたから、皮膚が裂けてら血が吹き出してきた。
 小鬼達はそんなには強くないけど、恐ろしく鋭い爪だけは別だ。キキキ……と嫌な声で笑いながら、振りほどいても振りほどいても腕を伸ばしてくる。

「うわっ、痛っ、痛っ」

 たまらずに、ぼくはロッドをぶんぶん振り回して、手当たり次第に小鬼を殴りつけたっ。
 こんな使い方をしたのが先生にバレたら大変だ。けどっ、そんなこと言ってなんかられないっ。

「インディ、それだよ! やつらの数が減ってきたぞっ。ロッドでごんごん殴っちゃえ!」


「ホントかよっ?!」

 ぼくはめちゃくちゃにロッドを振り回した。……ううっ、なんか戦えば戦うほど、魔術師とはかけ離れていくような……。
 まあ、反省はヒマな時にしよう。

 とにかく、しばらくロッドをぶんまわしていると、小鬼どもの姿が消えた。
 けど、かすり傷とはいえけっこう傷だらけになっちゃったぞ。

「インディ、小鬼はまだ消えてない!」

 鋭くミュアが叫ぶ。
 確かにミュアの言う通り、小鬼達はいったん引いただけで、遠巻きにぼくのことを見ている。

 どうやら、血の臭いがやつらを引きつけるらしい。
 いつ襲ってくるか、分かったものじゃない。こんな時、頼りになるのは魔術書だ。

「エタナアルデリラアム、小鬼封じの術を我に示さん!」

 

 

  第五章
    ☆はしばみにやどりし力
       はしばみには、悪鬼・死鬼を退散せしめる霊力あり

    ☆悪鬼・死鬼を封ず術
       はしばみの小枝にて 汚れし土に聖十字を描け
       しかるのち唱えよ 『グラングラーンディン』

 

 

 複雑な図形を覚えるためにそこを読み返してから本を閉じると、すぐ側まで小鬼達が戻ってきていた。
 けど、今度は退治する方法は分かっているんだ!

「インディ、早く、早く!」

「分かってるさっ」

 買っててよかった、はしばみの枝っ。
 それをかざすと、鋭い爪をふりかざして近寄ってきた小鬼どもは、少したじろいだ。
 だが、抜け目なくこっちをうかがいながら、キキキキ……と嫌な声を立てて飛びかかるスキを狙っている。

 油断はできない。
 ぼくは小鬼に注意を払いながら、魔術書の指示に従って地面に聖十字を完成させる。
 その中央に立ち、はしばみの枝をかざして呪文を唱えた。

「グラングラーディン、
 汚れし土より生まれし者、再び土に還らんこと!」

 はしばみの枝にやどる魔力を、はっきりと感じる。――それを引き出しているのは、ぼくだ!
 ぼくの力だ!

「キキィイッ」

 小鬼達が後ずさる。うまくいくか?!

「やったあ!」

 ミュアが木の上から駆け下りてきた。
 小鬼達は土くれとなりボロボロと崩れ、やがて土の中に吸い込まれていった。
 封印成功っ!

 その時、先史時代の墓の積み石が崩れた。その下からは、地下へと続く階段がのぞいている。

「……っ」

 ミュアが背中の毛を立てて、針鼠みたいになった。――よっぽど、よくない気配を感じているらしい。
 正直言えば、ぼくも不気味な気配を感じたけれど、小鬼達を魔法で封じた成功でで気が大きくなっていた。

「ミュアはここで待っててもいいよ」

 ぼくは意を決して、その階段を下りていった。
 苔むした階段を、足を滑らせないように注意して進む。そんなぼくを尻目に、ミュアが軽やかな足取りでぼくと並んで歩いていく。

 ミュアめ、こなくてもいいって言ったのに……でも、一人で進むよりも心強かった。……すぐ図に乗るから、本人に言う気はないけどさ。
 長い階段の先に、仄かに明るい部屋にたどり着いた。

「げっ……」

 中に足を踏み入れた途端、ぼくは思わず立ちすくんでいた。そこは、不吉な地下墳墓だったんだ!
 まわりの壁には、無数の骸骨で埋め尽くされている。

 それもきちんと埋められているのではなく、無造作に次から次へと積み重ねられたような有様だ。
 うえー、こんなのはやだよ〜。

「インディ、あれ……」

 ミュアが先に気づいた。奥の祭壇の上にうずくまっている、黒い布の塊に。
 ――そいつは音もなく起き上がった。
 黒い布と見えたのは、全身をすっぽりと覆う長衣(ローブ)だった。

 深くかぶったフードの下から、髑髏がニヤリと笑う。
 死神……?!
 骨の手が、傍らにあった大鎌を引き寄せ、握り締める。――ってことは、こいつがベリアル……。

「くっ!!」

 先手必勝!
 ほとんど無意識に、ぼくはブーメランを投げていた。
 狙いも距離も確かだった。だが、なぜかブーメランはベリアルの手前で回転を止め、そのまま下に落ちた。

 同時に、眩暈に襲われる。
 きっと、これはベリアルの呪縛――力を奪われたんだ!

「インディ、魔術書っ! 早く、早くっ」

 ぼくは慌ててロッドで魔術書に触れ、呪文を唱えた。

「エタナアルデリラアム、
 死神ベリアルを封じる道を示さん!」

 後退りながら、素早く本を読み取った。

 

 

  第七章
    ☆ベリアルの邪力を封じる術

      初めに聖魔主のロッドにて 己がまわりを三つのサークルで閉じん
      これ 防御の魔法陣なり  三度の呪文を唱うべし
      『エラッサムバーリア』
      死の鎌が降り下ろされん時  聖魔主のロッドにて その…目を突くべし

 

 

 ぼくは本を開いたまま、その指示に従った。

「ミュア、離れるなよ!」

 呪文を唱えながら、ロッドで床に円を描く。
 1つ……2つ……3つ!
 防御の魔法陣は完成した。

 重なり会うサークルの中央に立ち、それから――それから、肝心の部分が消えて読めなくなっているっ!
 『聖魔主のロッドにて その…』その、の先が重要なんじゃないかあ――。

 その、どちらの目なんだぁっ?! 右目か左目かっ?! どっちの目を突けばいいんだ?!
 パニックってるぼくをよそに、ベリアルはサークルの縁で止まった。
 そこから先には、進めないらしい。

 ホッとしたのも束の間、ベリアルは長い鎌をふりあげた。
 3つのサークルが重なり合ったわずかな場所にいるかぎり、ベリアル自身は近づけないが、その大鎌までには魔法陣の威力は及んでいないっ。

 鎌は十分に、ここまでとどく……!
 髑髏の顔が、ニタリと笑う。
 うなりをあげて鎌が降り下ろされた時、ぼくは無我夢中でロッドを突き出した!

 ぼくはとっさに、右の目を狙っていた。ロッドがベリアルの右目を貫く!

「う…っ?!」

 一瞬、ベリアルの動きが止まった。が、それもほんの少しの間のことで、ふりあげた鎌がジリジリとぼくに向かって動いてくる。それを避けようと、ぼくは必死に腕に力を込めた。

「インディ、違うっ、魔力だ! ベリアルを封じるには、魔力がいるんだっ」

 もどかしげなミュアの叫びに、ぼくはさっき、小鬼を封じた時の感覚を思い出した。あの時――ぼくはどうやったっけ?

 確か、軽く握ったはしばしの枝に、体の奥から力が流れていく感じ……ぼくは手の力を抜いた。
 そして、思いをこらして念を注ぎ込む。

 ロッドが輝いていく。
 ロッドを通して魔力が戦っているのが、はっきりと分かる。ベリアルの邪力と、ぼくの魔力と――。

 負けない。
 負けるわけには、いかないんだ……!
 そう思っているのは、ベリアルも一緒だった。

 髑髏なのにもかかわらず、ぼくにはやつの焦りを感じとれた。ぼくも疲れているけど、ベリアルも疲れているんだ。
 こんなに、極度に精神力を強いられる消耗戦は初めてだった。

 だんだんと、ぼくは焦ってきた。
 だって、いくら魔界でレベルアップしたとはいえ、ぼくは正式に魔術を習ったわけじゃない。

 長引けば、間違いなくぼくの精神力が持たなくなる。
 まだ余力の残っているうちに、早く勝負をつけるしか、ぼくに勝ち目はない……!

「……ベリアル…! ぼくに従えっ…封じられるんだ……っ」

 ぼくの挑発に、ベリアルは乗った。
 死神は、一気に鎌を降り下ろそうとする! が、ぼくもここぞとばかりに精神力のすべてをロッドに注ぎ込んだ!!

 ロッドが一瞬強く輝き、ぼくは思わず目を閉じていた。
 ――再び目をベリアルに戻した時、鎌はぼくのすぐ頭上に止まっていた。髪の毛に触れているのに、それ以上上がりも下がりもせず、ピクリとも動かない。

 どうなったんだ……?!
 ぼくもミュアも、そしてベリアルさえも石のように動かずにいた。

「………」

 やがて、ミュアがまず溜め息をついた。そして、ぼくも息を吐く。
   ピキーンッ ピキッ…

 何かがひび割れる音が断続的に響き、ベリアルの髑髏面にいくつものひび割れが走った。ロッドで貫いた目の回りから、全身へと、蜘蛛の巣のように広がっていく。
 ベリアルは、細かい破片となって崩れ落ちた……。

 残ったのは、宙に浮かんだままの大鎌だけ――それに触れると、鎌はごく当たり前の重みを伴ってぼくの手に収まった。

「これで、3つ目だ……」

 満足感を噛み締めていると、ミュアが憎まれ口をたたく。

「こんなのに手間取ってちゃ、まだまだ魔術師とは言えないよ」

 ミュアはしきりと、背中の毛をなめようとしていた。
 ふん、いいさ。ぼくはもう、知っているんだから。

 どんなに大口叩いてたって、ごまかされない。ミュアがそうやって毛をなめたがる時は、気を静めようとしている時だってことを。
 なんだかんだいって、ミュアだってすっかり興奮しているんだ。

「さあ、はやいとこ、こんな所からひきあげようぜ」

 ぼくはミュアを軽くけっとばし、先に立って地下墳墓から駆け出した。魔力比べでなんか、体がというよりは心がぐったりと疲れているけど、こんなとこ、一秒だって長居はしたくはないもんね。

「あっ、インディ、待ってよ」

「早くこないと、置いてっちゃうぜ。さあ、街に戻ろうっ」
                                 《続く》

 

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