Act.14 お茶の会は午後8時から |
「ちょっと来て、アントン。生クリームを泡だてるのを、手伝って」 水曜日の日、お母さんはやたらと張り切ってお菓子を作っていた。 「でも、まだ早すぎるよ」 「早すぎる? もうすぐ4時よ」 そりゃあ、普通の子をお茶に誘うなら決して早くはない。ただ、問題は今日の招待客は吸血鬼の子供だってことだ! 「リュディガーは……あの二人は、多分、8時頃じゃないとこないよ、きっと」 ぼくがそういうと、お母さんはあきれて首を振った。 「なんですって、8時? でも、それじゃ、もうあなたの寝る時間じゃないの!」 「うん、分かってる。だけど、リュディガーは都合があって、それ以上早くは来られないんだ」 なんせ、吸血鬼は太陽に当たれば消滅してしまう。どうしたって、早く来られるわけがない。 「変わっているのね」 「ぼく、最初からそう言っておいたよ。リュディガーは起きるのがすごく遅いし、お茶やケーキが苦手だって」 「…………まったく、変わっているわ!」 そう言いながらも、お母さんはとりあえず生クリームを泡だてるのはやめた。そして、困ったようにガスレンジのコーヒーポットを見る。 「このお茶の時間は、どうしようかしら? もう、ほとんど用意できているのよ」 「とっておけばいいじゃない。リュディガー達は、8時には来るもの」 「だけど、夜の8時にコーヒーなんて飲めないわ。眠れなくなるじゃない」 ぷんぷんしながら、お母さんは言った。 「じゃ、お茶は今飲んでさ、8時の時はりんごジュースでいいよ」 お母さんはそれには返事をしなかったけど、ガスレンジからやかんを取ってコーヒー越しに煮立っているお湯を注いだ。 「8時にお茶会なんて! それで、明日の学校はどうするの?」 「しかたないよ、これ一回っきりだもん」 ぼくがそういうと、お母さんもとうとう諦めたらしい。それでもぼく用のココアにミルクを入れながら、不満そうに言った。 「でも、お母さんは決して賛成なわけじゃないのよ。あなたの、その変わったお友達になりたくて、しかたなく許しただけなのよ」 それを聞いて、ぼくはホッとした。 後は、本当にリュディガーとアンナが来るかどうか、だ。
お母さんのお母さんから譲られたっていう上等の食器や、銀のスプーン、同じく銀のロウソク立て、それに忘れちゃいけないのは、お母さんが今日の午後いっぱいかけて焼きあげた、いい匂いをプンプンさせているチーズケーキ。 さらにぼくの大好きな生クリームを挟み込んだメレンゲ菓子と、普段は高すぎるからとめったに買わない、甘い詰め物入りのチョコレートクッキー。 ――だけどせっかく支度したのに、お客さんがまったく手をつけなかったら、お母さんはさぞ機嫌を悪くするだろう。 「でも……リュディガー、食べないと思うよ。あいつ、好き嫌いがすごく激しいんだ」 「そう? アントン、リュディガー達は何が好きなの?」 ぼくは少し考えてから、答えた。 「えーと……アンナは、チーズが好きだよ」 リュディガーの好物に関しては、とても言えやしない! 「そう。じゃあ、チーズの軽いおつまみでも作りましょう。手伝ってくれる、アントン?」 お母さんの手伝いをしながら、ぼくは少なくとも10回は時計を見ていた。 嬉しさと、不安で胸がドキドキと脈打つ。――リュディガー、本当に来たのかな? お父さんやお母さんは、いったいなんて言うだろう? ああ、何もかもうまくいってくれたらなぁ! とにかく、二人を迎えいれなきゃと思ったけど、膝がガクガクしてとても歩けない。ぼくが行くよりも早く、お父さん達が先に玄関のドアを開けていた。 「こんばんは。お招き、ありがとうございます」 愛想のいい、可愛らしい声が耳に飛び込んできた。アンナだ。リュディガーの声がしないけど、彼は来たのかな? 「まあ……」 お母さんが、軽く息を飲む声が聞こえた。だけど、すぐにそれを隠した声で、返事を返す。 「こんばんは」 「やあ、これはこれはようこそ」 お父さんは、いやに陽気だった。でも、声にいくらか驚いたような響きがあった。
真っ白に近い髪に、それよりも一段と白い肌――そのせいで赤い目と黒い服が一段とひき立って見える。双生児のようによく似た容貌も手伝って、二人は人間と言うよりはよくできた人形のようにさえ見えた。 でも、人形にしてはリュディガーはどこか不機嫌そうだったし、アンナは愛想よくにこにこし過ぎているけど。 「……おにいちゃんってば」 アンナがそっとリュディガーをつっつくと、ちびっこ吸血鬼は不機嫌そうに肘で押し返した。 「うるさいな、分かってるったら!」 「こんばんは」 アンナに比べるとだいぶ無愛想だったけど、とにかくリュディガーも挨拶をして軽く頭を下げる。その動きに併せて、マントがひらっと揺れた。 「……どうぞ! この花は、あなたにもってきました」 どこかぶっきらぼうにリュディガーが言うと、アンナが丁寧にバラをお母さんに差し出した。 「まあ、ありがとう!」 嬉しそうに呟いて、お母さんはバラを眺めまわす。 「綺麗でしょ? こういうの、うちにはたくさんあるの!」 得意そうにはしゃぐアンナを、リュディガーは怖い目で睨み、黙らせた。 「さっそく、飾らせてもらうわ」 そうお母さんは言って、台所へと消えた。それと同時に、お父さんはキョロキョロし始める。 「いったい、アントンはどこにいるんだ?」 「ここだよ」 安全圏から抜け出すようで勇気が必要だったけど、ぼくはとにかく隠れていた物陰から出た。 「アントン! 元気?」 叫んでから、アンナは顔を赤らめた。 「ぼ、ぼく? 元気だよ」 普通に答えたつもりだったけど、ぼくの顔も赤くなったに違いない。 「さあ、中へどうぞ。すっかり支度はできてるぞ! 君達が、りんごジュースが好きだといいんだが」 先にたって歩きながら、お父さんが二人を誘う。アンナはその後をすぐについていった。物珍しげに辺りを見回す姿は、すごく嬉しそうだった。 「やあ、リュディガー。よく来てくれたね」 挨拶すると、リュディガーはひょいと肩を竦めた。 「アンナがあんまりうるさくって、しつこいからな!」 …………どうやら、アンナの『説得』ってのはそーゆーものだったらしい。 「で、でも来てくれて嬉しいよ。おまけにバラまで持ってきてくれて」 「オレはやめろって言ったんだ。あんなもの持ってきたら、ますますバレやすくなるっていうのに」 不機嫌に、リュディガーが言う。でも、ぼくはその意味が分からなかった。 「バレるって?」 思わず聞き返すと、リュディガーは辺りを見回してから玄関先に落ちたバラを一輪拾った。 「……っ?!」 今度は、ぼくが息を飲む番だった。 「こーゆーこと」 そう言って、ちびっ子吸血鬼は枯れたバラをぼくに放った。とっさに受け止めたけど、バラは完全に乾き切っていて、触るとそれこそバラバラに砕け散ってしまった。 考えてみれば、バラを贈るなら女の子が贈るよりも、男の子が持ってくる方が、はるかに自然なんだ。そうしなかったのは、こんなわけだったのか……。 「アントン、リュディガー君、何をやっているんだい? 早くおいで」 お父さんに急かされて、ぼくはやっと我に返った。とにかく、今はこのお茶会を無事に乗り切らなきゃ!! 「はぁい、今、行くよ」 リュディガーの背を押すようにして、ぼくは居間へと進んだ。
綺麗に飾り立てられたテーブルを見て、アンナは一人、はしゃいでいた。 「それに、みんなでお茶なんかしないもの。食事は、みんな別々にとるのよ、つまんないわ」 興奮してるのか、アンナはリュディガーの視線にまったく気がついてないみたいだった。余計なお喋りはするなとばかりに、不機嫌そうな目付きで見ているんだけど。 「まあ、それ本当?」 その時、花瓶を抱えたお母さんが入ってきた。さっき、アンナが持ってきたバラを、サイドテーブルの上に飾る。それを嫌ってか、リュディガーがこっそりバラから離れようとしているのが、妙におかしかった。 「ええ、うちの家族はみんな、忙しいの。仕事で留守にしがちだし」 そう言いながら、アンナはリュディガーと並んで姿勢よく椅子に座った。ぼくやお父さん達も、適当な椅子につく。 「さあ、二人ともどうぞ。お口に合えば嬉しいんだが」 お父さんに進められて、アンナとリュディガーは一瞬、困ったように顔を見合わせた。 それに気がついて、ぼくは慌てて言い添えた。 「ア、アンナは、チーズが大好きなんだよ」 「そうかい? それじゃあ、これをどうぞ」 お父さんが、チーズのカナッペの皿を二人に差し出した。すると、アンナがおずおずとカナッペを二つ取って、自分の皿に置いた。 「さあ、食べて!」 お父さんに、進められてアンナは小さくつぶやいた。 「わたし……わたし、パンは好きじゃないの」 「なんだって? それじゃあ、チーズだけ食べればいい」 お父さんが笑って言うと、アンナはホッとして微笑んだ。それから、お行儀良くチーズをつまみ出した。 「このケーキはヘルガが焼いたんだ。気に入ってくれるといいが」 お父さんはチーズケーキを大きく切って、みんなのお皿に乗せていく。 「ええ、とてもおいしいです」 礼儀正しくケーキを食べながら、アンナは返事をする。 「りんごジュースがいかが?」 お母さんに聞かれ、アンナは少し考えてから言った。 「できれば、ミルクを頂けますか?」 「ええ、すぐに持ってくるわ」 お母さんはコップにたっぷりのミルクを注いで、それをお客様の前に置いた。それもアンナの分だけじゃなく、リュディガーの分まで。 「ありがとう。ミルクはとっても身体にいいの。それに、体に力もつくし」 そう言って、アンナは嬉しそうにミルクを飲んだ。だけど、リュディガーはさっきから、ケーキをつついているだけだ。そんなリュディガーに、お父さんは明るく話しかけた。 「それにしても、君達はいつも、カーニバルのお祭りをやっているのかい?」 「カーニバル?」 リュディガーは何を言われたのか分からないように、きょとんと聞き返す。 「あ、リュディガー、ぼくがそう言ったんだ。君はカーニバルの衣装が好きだし、よく行くんだって。だって、そうだろ?」 リュディガーとアンナは、一瞬、顔を見合わせてからくすりと笑った。 「うん、その通りだ!」 今夜、初めて機嫌のいい笑顔を浮かべて、リュディガーが言った。 「それで、君達、どこでいつも、そんなお祭りをやっているの?」 なおも聞くお父さんに、アンナは平然とした顔で答えた。 「個人の家でよ。お父さんの古い知り合いのお宅なの」 ぼくは感心して、アンナを見た。これ以上いい答えは、ぼくだって思いつかない。 「君達はいつも一緒に、カーニバルに行くのかい?」 「ええ。わたし達、たいてい、なんでも一緒にやるの」 アンナはそう言ったけど、ぼくは隣でリュディガーが小さく肩を竦めるのを見逃さなかった。でも、幸い、お父さん達はアンナに気を取られて、気がつかなかったみたいだけど。
今度はお母さんが聞く。 「そんなことないわ。おにいちゃんは女の子にたいする考えが、かなり古いんですもの。女の子より、男の子の方が勇気があるって言うのよ」 そう言いながら、アンナはリュディガーをちらっと見た。もちろん、この挑発にちびっ子吸血鬼が黙っているはずがない。 「だって、そうじゃないか。女の子なんて、普段はぺちゃくちゃうるさいのに、ちょっと危険な目にあうとからっきしなんだから」 リュディガーの率直な意見にぼくはひやひやしたけど、お父さんは何がおかしいのか、声を立てて笑った。 「まあ、それも一理あるね。たいていの女の子は、木登りしたり、どろんこになったりするより、綺麗な洋服を着る方が好きだろうからね」 「なんですって? そんなことないわ!」 アンナは大きく頭を振った。 「なぜ、女の子は綺麗な物を着るの? 親がそれを着せるからよ! 「その通りだわ」 お母さんは、アンナの意見が気に入ったみたいだ。 「おやおや、意見が別れたみたいだね。じゃ、おまえの意見も聞きたいな、アントン」 お父さんが余計なことを言ったせいで、みんなの視線がぼくに集まった! 「ぼ、ぼく? ぼくは、女の子なんて最低だと思うな。いっつもくすくす笑っていて、ドッジボールの時はすぐ落とすんだもの」 言った後で、アンナの気を悪くしたような表情に気がついたけど、もう遅い。 「あら。わたしは男の子の方が最低だと思うわ。いっつも、女なんてサッカーができないなんて言ってるんですもの!」 アンナの文句を聞いて、リュディガーはとうとう耐えきれなくなったようにワッと笑い出した。だけど、それを押さえようと両手で口を押さえて笑っていたのが悪かったのか、リュディガーは咳き込んでぜいぜいあえぎはじめた。 「あら、大丈夫?」 お母さんは近くにあったミルクを手にとって、リュディガーの口元にあてがった。ついさっきまで爆笑していたリュディガーは、うっかりとそのミルクを飲んでしまったらしい。
突然、リュディガーは血相を変えて、お母さんを払いのけてアッという間に廊下に飛び出して行った。 「待って、どうしたの?!」 びっくりして、お母さんが後を追いかけていく。それを見て、アンナはくすくすと笑った。 「リュディガー……大丈夫かな?」 心配になって聞いてみると、アンナは気軽に答えた。 「平気よ。一口しか飲んでいないもの」 アンナのいう通り、コップのミルクはほとんど減っていなかった。飲んだとしても、一口か二口……そんなものだろう。でも、最初に会った時、リュディガーはボールガム一つで大騒ぎしてたけど。 「リュディガーは、お風呂場にこもっちゃったわ。中から鍵を閉めたみたいなの」 「鍵を閉めた?」 怪訝そうに、お父さんが問い返す。 「ええ。そして、中からものすごくぜいぜい言っている声が聞こえるの。本人は少し休めば大丈夫だって、言っているんだけど……あの子、もしかして病気なの?」 病気と言うか、なんと言うか 実は吸血鬼なんです、なんては口が裂けても言えないし! 「体質なの。食べられない物がたくさんあるだけで、おにいちゃんはすっごく元気よ」 その言葉を聞いてお母さんとお父さんは顔を見合わせ、何も手をつけていないリュディガーのお皿を見て、納得したように頷いた。 「そうだったの……アントン、なんで早く言わなかったの?」 お母さんは、ぼくを責めるように言った。 「あの子……リュディガーって、アレルギー体質なんでしょう? そういうのは、好き嫌いとは違うのよ」 アレルギーかどうかは知らないけど、リュディガーが普通の体質じゃないってことだけは確かだ。それに、本当は吸血鬼なんだとバレるよりは、そう思われていた方がいい! 「そろそろ落ち着いたかしら。様子を見てくるわ」 お母さんが立ち上がって、再びお風呂場に向かう。だけど、すぐに悲鳴じみた声が聞こえた。 「リュディガーがいないわ!」 ばたばたと足音と立てて、ドアをかたっぱしから開ける音が聞こえる。 「でも、どうやってうちから出ていったのかしら?」 「そりゃ、玄関からだろう」 お父さんは、気にも留めないように言った。だけど、お母さんはお父さんほど単純じゃない。 「でも、それなら、リュディガーの姿が見えたはずだわ」 確かに、風呂場から玄関へ行くには、居間の前を通って行くしかない。――もし、普通の人間なら! 「おそらく、その時、みんなそっちを見てなかったんだろう」 「そんなはずないわ。だって、ドアは開けっ放しだったのよ」 お母さんが頑固に言い張ると、お父さんは少し、ムッとしたみたいだった。 「それじゃあ、飛んでいったんだろうよ」 一瞬、どきっとしたけど、お父さんはただ、あてずっぽうを言っただけみたいだ。なのに、お母さんは真にうけたのか、さらにとんでもないことを言い出した。 「そう言えば、アントンの部屋の窓が開いていたわ!」 「えっ?」 そんなの、開けた覚えはない! 「あ、そう言えば、ぼく、開けっ放しにしてたんだ」 「ほら、ごらん」 お父さんは、どこまでものん気にそんなことを言っている。 本当のことを知ったら、どんな顔するだろう? 「……それじゃあ、わたし達、リュディガーを見過ごしたんだわ」 どこか、自分に言い聞かせるような口調でお母さんが言う。でも、そう言いながらも、お母さんは妙な目付きでアンナをまじまじと見つめていた。 「わたしも、もう帰らなくちゃ。おにいちゃんが心配だもの」 そう言って、アンナは立ち上がった。 「もう? そのうち、また来てくれるね? さもないと、きっとアントンの気がすまないだろうよ」 お父さんがそう言うと、アンナは優しい眼差しでぼくを見た。 「そう――嬉しいわ! 今日はとても楽しかった……どうもありがとう」 挨拶をすると、アンナはさっさとぼくの部屋の方へ向かって歩き出した。 「ちょっと待って! 方角が違うよ、玄関は左だ」 お父さんに言われて、アンナはびっくりしたようだった。――多分、ぼくの部屋の窓から飛ぶつもりだったんだな!
「可愛い子達だったじゃないか。それにお行儀もいいし」 アンナを見送って部屋に戻ってから、お父さんはそう言った。 「君はどう思った、ヘルガ?」 「そうね、とても綺麗な子供達ね。……でも、変わっているわ。白い髪に、赤い目――それにあの格好! ……まるで本物の吸血鬼みたい」 そりゃあそうだ、とぼくは思った。なんせ、本物の吸血鬼なんだから! 「おまえの考え過ぎだよ、ヘルガ。あの子達はごく普通の子供達さ。ただちょっと、おばあさんの古着箱に興味を持ち過ぎているだけさ」 「だけど、二人ともあんまり吸血鬼の格好が似合いすぎて……なんだか、気味が悪いの。正直に言って、お母さんはあの二人にすぐにまたなんか来て欲しくないわ」 「だけど、そんなことはアントンが絶対に承知しないだろうよ」 と、お父さんが笑った。 「その通りだ!」 ぼくは思わず叫んでいた。今更、二人との付き合いを禁じられるなんて冗談じゃないや。
そこまで一息にいってから、ぼくはお母さんを軽く睨んだ。 「だから、ぼく、最初からリュディガーは変わっているって言ったよ。ちゃんと、前もって注意しといたじゃないか」 「そう……ね、注意されていたんだったわね」 そう言ってから、お母さんは笑った。 「分かったわ――多分、お母さんも段々あの子達に慣れてくるわ」 それを聞いて、ぼくは重い荷物を下ろしたように、気が軽くなるのを感じた。 これでお母さんも二人のことを気にしなくなるだろうし、お父さんは相変わらずなんにも感じていないし! 「ぼく、もう寝る。おやすみなさい」 ぼくがそう言うと、お父さん達も優しく返事を返す。 「おやすみ」 深い満足感を覚えながら、ぼくはベッドに入って、頭の上まですっぽり布団をかぶった――。
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