3  謎が謎を呼ぶ不思議怪物、ゴメちゃん

 

 ゴメちゃんは世界でたった一匹しかいない珍獣、生きた宝石ともいわれるゴールデンメタルスライム。臆病で人見知りをするゴメちゃんは小鳥のように羽の生えた可愛らしい怪物で、ピィピィ鳴く声もラブリーである。

 知能はかなり高そうな感じで、人間の言葉は分かるらしい。
 喋ることはできないがダイとチウだけはゴメちゃんと会話できるし、はっきりとした言葉は分からなくても、付き合いが長いポップやマァムなどはけっこうゴメちゃんの意思が分かるらしい。

 ゲーム版には登場しない不思議な生き物で、メタルスライムという割にはかなり柔らかいようだ。体を変形させてみたり、マァムの服の中にこっそり潜り込むなんて真似もできる。

 一見、ただ可愛いだけで何の役にも立たないマスコット的存在のように見えるが……そう思うのは素人の浅はかさ、実は不思議な力を秘めた不思議な怪物なのだ。
 魔王の邪悪な意思を受けつけないゴメちゃんは、時々、それだけでは説明のつかないような不思議なパワーを発揮している。

 対クロコダイン戦の時、ほとんど気絶していたダイの体力を回復させ、竜の紋章の発動を促したのはダイの体にかかったゴメちゃんの涙だった。
 また、対バラン戦ではもっと不思議な力を見せている。

 死んだポップにレオナが蘇生呪文をかけた時のこと――ポップの傍らに寄りそって気絶していたゴメちゃんの体が光り輝き、あの世の入り口と思われる場所をさまよっていたポップの魂の元に意識を飛ばし、ポップを引き止めたのだ!

 この時はなぜか、ゴメちゃんはちゃんと言葉を話している。
 心臓が停止していたにもかかわらずポップがダイに援護魔法を放てたのは、おそらくゴメちゃんの能力によるものだろう。だが不思議なことに、蘇生後のポップがそれを覚えていたにもかかわらず、ゴメちゃんは何も覚えていない。

 さらにチウ対フェンブレン戦ではやはり体から光を発し、オリハルコン製の体を持つフェンブレンに体当たりをかまして相手の顔をへこませる程のダメージを与えた。また、瞬間移動呪文で敵に連れていかれそうになったレオナを助け、さらに彼女が魔法力を吸われそうになった時も助けている。

 どのケースでも、ゴメちゃんの無意識状態で起こっていることが興味深い。
 状況に差はあれど、共通しているのは仲間を助けたいと思っていること――危機的状況に、その秘められた力が発動している。

 それと関係しているのか、ゴメちゃんの行動パターンにはおもしろい傾向がある。普段はダイの側にまとわりついている彼だが、誰かが危ない状態になるとそちらについて行くことが多いのだ。

 対ヒュンケル戦で、ダイとポップにではなく人質となったマァムについていったことを初めとして、蘇生直後なのに無理をして見張りをかってでたポップの側についていたりなど、危険度や安全度を度外視してとにかく心配な方の側に付き添うのがゴメちゃんの行動パターンだ。

 物語後半ではチウ率いる獣王遊撃隊のメンバーとしてチウと一緒に行動することが多いが、これもチウが気にいったからなのか、それともチウが心配だからなのかは悩むところ……。
 しかし、最初は知らない人と会うことさえ恥ずかしがっていたゴメちゃんが、ダイ達と戦おうと頑張っているのは見るからに微笑ましくて、思わず応援したくなってしまう。たとえ、何の役にも断たないとしても……。

 ゴメちゃんの力の不思議さから『もしかしたら、おれ達の守り神なのかもしれねえな…』とは、ポップの言った台詞だが、その割には彼はあまりゴメちゃんの能力を当てにしている様子はない。

 役に立つ立たない以前に一緒について来てくれる気持ちの方が、みんなにとっては嬉しいことのようだ。

 

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