5  先輩になり損ねた、お調子屋ポップ

  

 ランカークスというド田舎出身のポップは、15歳の魔法使い。
 登場時の彼の性格を一言で言えば、お調子者。
 感情の起伏が激しくてけっこう気の強いところを見せたかと思うと、急に弱気になって臆病風を吹かしたりする。

 その年頃の男の子に相応しく可愛い子に弱くてちょっとスケベなところがあるくせに、本当に好きな子にはなかなかそれが打ち明けられない。人は悪くないのだが、どうも腰の据わらないところがあるのが困りもの。

 アバン先生と一緒にデルムリン島を訪れ、一緒に修行を受けた彼はダイにとっては兄弟子に当たるのだが、残念ながら彼には先輩の威厳はかけらもないっ。
 アバンの強さに感激し家出してまでもおしかけ弟子となった割には当初のポップは呪文の習得度はいまいちで、修行にも熱心とはいいがたい。

 ダイに会う前から一年以上もアバンの修行を受けていたことや三つ年上なことを考えれば、十分『兄弟子』になることもできたし、また、アバンもそれを半ば期待していたはずなのだが性格的に問題があった。

 ポップは相手が魔物だろうが偉い人だろうがあるいは自分より年下だろうが、ほとんど接する態度が変わらずタメ口を叩くような奴なのだ。
 ただ、ダイと違う点はポップはけっこう人の好き嫌いが激しくて、気に入らない相手と見れば初対面でもケンカを売ってしまう。

 敵として出会ったヒュンケルやクロコダインはまだ仕方がないで済ませられるかもしれないが、マァムに関しては状況が状況とは言えポップの対応次第によってはまったく違った出会いになっていた可能性が高い。

 ダイとは弟弟子と言うよりは友達として付き合っていたが、……最初の頃はどう見てもポップより年下のダイの方がしっかりしていた。
 これは紛れもない事実だ。

 おまけにピンチになればダイさえ見捨てて逃げるわ、正義感や使命感にかけているわと一行きってのトラブルメーカーだったのだが、途中からどんどん成長し頼りになる仲間となりダイの一番の親友となっていく。

 しかし、だからと言って急に真面目になったとか、性格が思いっきり変わったとかいうわけじゃない。

 どんな時でもふざけて見せるお調子振り相変わらずだが、勇気があり最後まで諦めないダイや、優しくて正義感の強いマァムと出会ったことに影響を受け、ポップはぎりぎりまでがんばるしぶとさを身に付けたのだ。

 そうなってくると、ポップの感情の起伏も好き嫌いの激しさも、いい方向に働くようになってくる。

 親友や仲間を大事にし、人間を踏み握る魔王軍のやり方には理屈抜きで怒り、それに対抗する方向に成長していったポップは――確かに強くはなった。
 強くはなったし、みんなからも頼られる――多少の問題は残しているものの――少年にはなったのだが、トラブルメーカーと言う点では以前と変わりがない。

 いや、感情に任せて無茶をやるようになった分、ますますひどくなったともいえる。
 なにせ前は最悪、危なくなったら逃げるだけだったのが、後半では仲間を怒らせてわざと逃げた振りをして強敵にたった一人で特攻をかけたり、あからさまな敵の挑発に乗ってみんなの制止を振り切って一人で敵陣に飛び出していったりと、見ている方が寿命が縮まるような真似をやらかすようになったのだ。

 …つくづく、問題児と言うものは、いつになってもやっかいごとばかり引き起こすものらしい。

 しかし、それでもポップは一行にはかかせない、重要メンバーの一人。
 魔法使いとしての実力よりもみんなを引き立てる明るさ、そしてポップ自身も気付かないところで人の心を動かす『人間らしさ』で、ダイやその仲間に多くの影響を及ぼしている。

 長所も多いが欠点も多いポップは、ダイ一行の中ではもっとも等身大に近い、人間臭をモロに出せるキャラクターだ。
 
 

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