6 逃げ出し野郎、ポップ君の逃走歴!

  

 さて、ポップは自他共に認める『逃げ出し野郎』である。
 直接、敵から逃げるのももちろんだが、親に『ガキの頃からなんでも途中で投げ出しちまった』と言われたように、登場時のポップはとにかく踏ん張りのきかない性格だったのだ。

 パッと見ただけでもその雰囲気が伝わるのか、レオナはポップと会ってまもなく、まだ名前もろくに覚えていないような頃から『ああいうタイプは仲間がピンチになったらまっさきに逃げるわよ…!!』と、ずばり見抜いていた。

 まあ、ダイとちょっとしたデート気分で買い物に出かけようとしているのに、ダイがポップにこだわったことでちょっと意地悪を言ってみたくて誇張した台詞でもあるが、ダイでさえそれをフォローできなかったりして。

 最後の決戦に備えみんなで決戦の地、死の大地に移動する時も『(中略)…そんなセリフ言っちゃうと逃げ帰ったりした時、カッコ悪いわよおっ!!』とレオナがからかったりしていたが、ポップは実際はどのくらい逃げているのか…?

 さて、後述のリストを見ていただければ分かる通り、ポップが実際に逃げ出した回数は14回。一見えらく逃げ回っているように思えるが、自分の保身ばかりを考えて逃げ回っていたのは対クロコダイン戦までの3回のみ。

 ……まあ、これでも十分多いと言えば多いのだが(笑)それ以降はポップは逃げたいとは思っても踏ん張るようになってきた。

 対ヒュンケル戦以降は、ポップは自分が逃げたいとは思っていなくても、仲間を助けるためにあえて逃げを選ぶパターンが増えている。

 どうしても勝てない相手と戦うケースでは、全滅を避けるため一時撤退するのも、有効な作戦の一つ。

 一行の軍司役とも言うべき魔法使いがその正しい判断力を持てば、仲間の安全率がぐっと高くなるがポップは仲間の安全を最優先するあまり、その判断が緩い。
 自身はかえって危険に飛び来んでしまったり、逃げる作戦を頻繁にあげてしまったりして、いまいち適確な判断力を供えているとは言い難いようだ。

 それに人間、前科があるとなかなかイメージを回復できないらしい。
 行方不明になったダイを探すため、みんなが総出で彼を探している最中に『ポップの姿が見当たらない』だけで、いきなりみんなが動揺してしまったりして。

 しかし『逃げ出し野郎』だったことも、まんざらマイナスばかりじゃない。
 ダイが周囲の重圧に耐え切れず逃げてしまった時も、ポップはそのダイの気持ちをくみとり、理解してあげることができた。

 無意識に飛び出していったダイの居場所を捜し当て、彼を責めることなく再び戦う勇気を与えたのは、ポップも逃げ出して、そして立ち直った経験があるからだ。

 『いやな事からは逃げたい』と言うのがポップの基本発想だが、同時に逃げたいと思う気持ちを克服して正面から立ち向かう勇気を育ててきた彼は、今では『一番頼れる仲間』としてみんなの信頼を集めている。

 第一印象が悪くても、その後の行動さえよければイメージを回復するのも難しいことではないのだ。

 よほどの事情がない限り逃げるような奴じゃないと確信しているからこそ、安心してポップの逃げ癖をからかって遊ぶこともできるというもの。
 それが証拠に、ポップは大魔道士になった後――最後の戦いでは一度も逃げてはいない。
 しかし逃げなくなったとはいえ予想外の行動を取るところは相変わらずで、みんなの苦労や心配はつきそうにないのだが…。
 
 
 

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