7 こんな先生に習いたい! いたせりつくせりの家庭教師アバン

  

 アバン・デ・ジニュアール?世ことアバンは、勇者、僧侶、魔法使いなど育成する家庭教師。中世の王様のような髪形にはどぎもを抜かれるが、親しみやすい口調といいおちゃめな行動といい、先生と言うよりは気のいいお兄さんと言う感じだ。

 剣技にかけても魔法にかけても、超一流だが、アバンはそんなことをおくびにもみせない。ピシッと決めずに軽いジョークではぐらかせて見せる。ちょっとトボケた印象のアバンは、わざとそんな風に振る舞って周りを和ませる温厚で優しい性格の持ち主だ。

 この道15年のベテランとチラシで豪語していたが、その割には弟子はたったの4人……少ない気もするが、要は量より、質。

 しかも4人とも性格も勉強意欲もまったく違うのにそれに相応しい方法でそれぞれに指導した手段には、現在の詰め込み教育にも見習わせたいところ。ダイ達の冒険の導き手として登場しごく初期に亡くなったものの、彼がダイ達に与えた影響は大きい。

 直接会ったわけでもないのにクロコダインにも会ってみたいと思わせ、レオナもアバンの教えを受けたいと願っていたほど。もちろん、直接指導を受けたダイ、ポップ、マァム、ヒュンケルに与えた影響は計り知れない。

 アバンは自分のことについてはほとんど語らずに逝ってしまったが、実はアバンは15年前に魔王ハドラーを倒した勇者。
 もっとも、ダイとポップはそんなことはまるで知らないまま弟子入りしたのだが……。それでもアバンを先生と慕い尊敬したのは、彼の人格や実力自体に惹かれたからだろう。


 かなり後になってから知ることだが、アバンはカール王国の学者の家系の生まれで、若い頃カールの王女フローラを助けたことをきっかけに騎士団に入り、ハドラーを倒すために旅立っていった。

 そして見事に魔王を打ち破ったものの、いつの日か魔王復活の日が訪れることを予測して、その後自分の遺志を継ぐ使徒達の育英に全力を注いできたのだ。

 アバンの授業は、青空の元で行う野外授業がほとんど。体術や剣技、魔法の特訓だけならまだしも、講議や魔法理論の勉強も木の下で行っている。しかも、授業の後はご自慢の手料理を振る舞うといったサービスぶりだ。

 しかも、生徒が望むならば朝夕の特別ハードコースも行い、生徒の上達のために一肌も二肌も脱ぐ覚悟なのだ。それにアバンは練習をサボりたがるタイプの生徒も決して見捨てない。競争心を煽り立てるような発言をして生徒のやる気を引き出そうとしたり、ことあるごとに特訓に参加しないかと誘ったりする。

 しかし、アバンはあくまでも生徒の自主性を尊重し、それを伸ばす方針を重視しているようで、叱って特訓を無理強いするよりわずかでもいいから本人がやりたいことをやらせている。

 その甘いとも言える教育がヒュンケルの恨みを増長させ、ポップの成長を遅らせたのだが、結果的には彼等はそれぞれ自分の力でそれぞれの問題を乗り越え、大きく成長した。
 卒業の時には、『アバンのしるし』と名付けたペンダントを渡したが、その意味については教えなかった。ダイ達が『アバンのしるし』の本当の役割を知ったのはかなり後……アバンの死後の話だ。

 ダイとポップを庇うためにアバンはハドラーに自己犠牲呪文をしかけて、壮絶な死を遂げた――。バラバラに吹き飛び、カケラさえ残らなかったアバンの死を嘆き、意地っ張りなポップが声を上げて泣いていたシーンが印象に残る。

 享年31歳――あまりにも早すぎる死を痛む人は多い……。
 
 

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