8 実は、エリートな成績優良児マァム |
ネイルの村に住むマァムは、男勝りで行動的な16歳の女の子。 そのあまりにも優しい心は敵にまで及び、正義に絶望して悪に走ったヒュンケルや、生命を弄んだあげく死にいたろうとしたザムザ、ハドラーを愛したがゆえに非情な攻撃を仕掛けてくるアルビナスにさえ、彼女は救いの手を差し延べた。 ダイやポップと会って、4、5年前に教えを受けたアバンのことを思い出して語るだけで先生が恋しくなり泣いてしまうなんて、意外と脆い一面も秘めている。誰に対しても優しく思いやりに満ちた彼女だが、なぜかポップには妙に当たりがきつい。まぁ、出会ったそうそうにケンカした上、印象が悪かったから仕方がないと言えば仕方がないのだが……。 だが、小さな頃からの知り合いのマトリフや村の男の子に対しても同様の態度をとっているところを見ると、他人に優しく身内に厳しいタイプなのかもしれない。 父のロカはもう死亡したが、母のレイラと村で暮らしていたマァムは、男手の少ない村で危険な仕事や力仕事を進んで引き受けていた、実によくできた娘さんだ。 父親から戦士の力と一本気な思いを、母親から僧侶の能力と優しさを受け継いだマァムは、初期は僧侶戦士だった。 両親ともにアバンの仲間であり、その間に生まれたマァムは平凡な村娘どころか生まれながらの正義の使徒と言っても過言じゃない。 マァムも小さな頃から村の人を守りたい一心で強くなろうとしてきたが、そのせいなのか、村に同じ年頃の少年少女がいなかったせいか、どうもマァムは情緒的な面がうといところがある。マァムは年頃の、それも魅力的な女の子なのに、自分の魅力について一切頓着してない。恋愛感情を意識させない爽やかな中性的な性格がマァムの魅力を引き立てているのも事実だが、それにしてもちょっと……。 ポップがはっきりと告白するまではマァムは彼の気持ちにちらりとも気が付かなかったし、それどころかヒュンケルの孤独に心を動かされる理由にも自覚がないままである。 なまじしっかり者で、戦闘でも適確な判断をこなし戦う勇気を持っていたため、マァムは精神的な成長に関しては一番遅れているかもしれない。 強さと優しさの両方を持ったマァムは魔弾銃を壊す覚悟でレオナの命を助け、その後一人で考えたあげく、転職を決意してしばらく仲間から離れることになる。 マァムは途中から武闘家になったキャラクターだが、戦闘力は大パワーアップを果たしたものの、精神的に成長したとは言い難いものがある。 たとえ戦いを終えたばかりの敵であろうとも、悲しみを持つ人に同情してしまう優しさがマァムの魅力だが、万人に向けられるその優しさがかえって自分に向けられる愛情を遮る壁となっているような気もするのは、杞憂だろうか。 なにはともあれ、物語終盤になってから恋愛感情に目覚め出したマァム――持ち前の良さを失わないまま、精神的にも大きく成長してほしいものだ。 |