15 ただのスケベか、大物か? 大魔道士マトリフ |
マトリフは一言で表現するなら『変人』だ。 その洞窟と言うのがまた怪しげで、わけのわからない物がゴロゴロ転がっていて、とかげやこうもり……人骨らしい物まである不気味さだ。 昔の仲間だったレイラからも困った人だと言われるマトリフだが、その実力は折り紙付き。 元アバンの仲間で、すべての魔法使いの頂点に立つとまで言われパプニカ王国の相談役となったこともあるマトリフは、98歳という今でさえ魔法力の勝負なら魔王ハドラーにさえ五分以上に張り合えるのだ。 100種以上の魔法を操ることのできるマトリフは、同時に2種類の魔法を使うこともできる魔法の達人なのである。 だが、それだけの力を持ちながら、最初はマトリフはダイ達に協力する気はまるでなかった。 おまけに『あんな弱そうな魔法使い、初めて見るぜ。おれがなんとかしてやらんと、あいつ死ぬぞ』ということで、ポップを弟子に取り鍛えるようになる。 詳しくは第二章3ポップの章に書いてあるが、マァムに『サ…サデイスト…』と思われるほど厳しくポップを鍛え直している。 最初は反発していたポップも次第にマトリフの筋の通った厳しさに尊敬を感じるようになり、彼を師匠として慕うようになる。 直接にはほとんど戦いに参加しないマトリフだが、それでも絶対的な知識量と経験からくる洞察力の鋭さはダイやポップにとっては拠り所となる貴重な情報。 また、戦闘だけではなく、マトリフは年の功か人情の機微にも通じている。 桁違いの魔法力ゆえに人に迫害された経験を持つマトリフは、ダイが人間ではない自分に悩むことが分かり、そしてそれを助けることができるのはダイにとってもっとも身近な人間――ポップだと分かっていたのだろう。 さらにマトリフはダイ達のために単身カール王国に向かい、アバンの書き残した本『アバンの書』を取ってきてダイ達に渡し、彼らを励ました。 マトリフは出番を追うごとにどんどんふざけた仮面の下から深みのある素顔を見せていくキャラクターだが、彼は後期になればなるほど、洞窟の中で寝ているシーンが増えていく。ただでさえ高齢な上、アバンや仲間を守るために無茶な禁呪法まがいの魔法を使い続けたせいか、終盤ではめっきり体が弱って何度か血を吐くことも……。 だが、それでも弟子であるポップに最強の呪文を教え、自分は引退を決め込み、最後の戦いの成り行きを静かに見守っていた。 人生の最後にきて息子のような存在の愛弟子を持つことができ、しかもその成長ぶりに寂しさと同時に嬉しさを感じているマトリフ。 |