17 夢はでっかく人一倍! 武闘家ネズミ、チウ君だいっ

  

 チウは本人が言うには、空手ねずみ。
 ゲーム版ではドラクエ3にでてくる、大ねずみ系の怪物らしい。
 大ねずみの特徴は、意外に動きが素早く逃げにくい相手だと言うこと。ごくレベルの低い怪物だ。

 さて、本編に出てくるチウは、もともとは悪い怪物でロモスの近くの村で人に迷惑をかけてばかりいた大ねずみ。

 だが、拳聖ブロキーナにつかまって修行した――正確には強制的にさせられたと言うべきか――おかげで魔王の邪悪な意思を跳ね返すほど強い意思を持ち、勉強して言葉もしゃべれるようになったねずみ君だ。

 人間の年にして約10歳前後のチウは、腕白ざかり、生意気ざかりのお年頃。
 それになかなかのおませで身の程知らずにも兄弟弟子であるマァムに思いを抱き、彼女にいいところを見せようとがんばる姿は微笑ましい限り。

 このねずみ君、けっこう正義感も強いし弱きを助け強きを挫く侠気にも溢れた奴なのだが……どーにも行動が空回りしてしまっている。
 それに、問題はその実力。

 3年も修行した割には、軍隊アリにさえてこずっていた登場時のチウ君――。
 一撃で大岩を砕くほどのパワーがあると本人やマァムは言ってはいるが、チウの腕力自体はいまいち出番がない。

 彼の強さには、はっきり言って思いっきり疑問符がつくのだ。
 武術大会で一回戦敗退したのはまだしも、その後、魔法使いのポップにケンカを売ろうとして簡単に頭を押さえ付けられてしまっている。
 なんつってもリーチがまるで違うから、お話にもなりゃしない。

 手を意味もなくぶんぶん振り回すだけで、まったくダメージにもなんにもなっていない。呆れて、手出しもしないでいるポップに向かって『……きょ…今日はこれくらいでかんべんしてやる…!』と、あくまで強がってみせる態度には、ダイもポップもそろってコケてしまったりして。

 ダイが『…へ…へんなやつと、知り合っちゃたんなぁ…』とぼやくのも十分頷けるというもの。

 ……非力な魔法使いに押さえ込まれているようでは、ホント、未来が暗いぞっ。
 手足が短いと言う武闘家として致命的欠陥がある分、まともな戦いは捨てた方がよさそうだ。

 しかし、力と根性だけは筋金入りのチウは、その後なりふり構わず体当たりや頭突きを主にして戦うようになった。
 特にご自慢の必殺技は全身の力をフルに使って回転しながら敵に体当たりをかます、窮鼠包包拳(きゅうそくるくるけん)!!

 ……まあ、体当たりでなぜ『拳』なのか悩むが、そこらへんはやっぱりねずみ君の浅知恵、命名のセンスに疑問があっても見逃してあげよう。

 それによってそこそこ戦えるようにはなったものの、自信過剰なぐらいでっかいを言う口ほどには、まだ足りない。

 ずんぐりむっくりの体型にどんぐりまなこのくせして『カッコいい』ことにこだわるスタイリストだが、悲しいことにいくら自分ではカッコいいことをした思っても、なかなか世間サマは認めてくれない。

 だが、武術大会後、ブロキーナ老師に諭されて少しは思い直したようだ。
 その後ダイ達の仲間として一緒に行動するようになったチウはその過信した勇気のせいで危険な場所へ勝手に行ってしまったこともあり、ポップに継ぐ第二のトラブルメーカーになりつつあるが……。

 しかし怪物の仲間を次々と増やし、二代目『獣王遊撃隊』隊長を気取って頑張っているチウは、実力派ともかく器量だけはやたらとデカい。
 自分の師匠、それに元は敵のヒムまで配下に加え、いいようにあしらっている彼は、果たして大物なのか単なる馬鹿者なのか……判断に迷うところ。

 とは言え、ちょぴっとお脳が弱い大ねずみ君はそんなことはまったく気にせず(と言うより、気がついてない)自分は勇者軍の主力と信じて、力一杯に最後の戦いを戦った。

 エピローグでは、モンスター軍団と一緒にデルムリン島で平和に暮らしていた。賑やかな彼のおかげで、さぞかしあの島も楽しい島になっただろう、きっと。
 
 

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