20 美しき女王! 実質リーダーのフローラ様

  

 元カール王国女王にしてレオナのもっとも尊敬する人――花の女神の名を抱く彼女は、その名の通り美しい女性だ。
 毅然として気高く、大人の魅力を漂わせる理知的な美人である。

 王女時代にアバンと知り合い、彼に想いを抱いてきたらしい。マトリフの説が正しいとすれば二人は両想いだったらしいが、彼女とアバンがどんな関係だったかははっきりしていない。

 カール王国滅亡後、長い間行方不明だったフローラは対バーン戦直後にレオナ達の前に現れて彼女達を救い、もう一度魔王に対抗するための対策を練りあげた。

 15年前、旧魔王軍との戦いの経験も持つ彼女は女性ながら勇猛果敢な軍師であり、また、彼女の統率力はおそらくはレオナ以上――年齢と経験、そして今も持ち続けているアバンの心を引き継いで、フローラはアバンがやり残したことを代わりに行ってきた。

 バーンに打ちのめされたポップ、マァムを励まし、勇者であることに自信を無くしたダイの心を理解し、アバンが育てるはずだったであろう最後の弟子レオナの素質を見抜き、育てる――。

 彼女の行動の裏には、今は亡きアバンへの信頼感がある。
 ことに印象的だったのは、大破邪呪文に挑戦し、ポップの失敗によって呪文が途中で中断された時――。

 戦おうとするダイ達に怪物は自分達に任せて大破邪呪文を完成するように勧め、失敗したポップを責めずに『アバンは決して間違った者は選ばない』と力強く言い切った。

 この時、彼女がポップを初めとするアバンの使徒にあって数日……しかも、ポップとは一緒に戦ったわけでなし、この状況で信じ切れるほどポップを知っていたわけではないはずだ。

 それでも揺るぎないほどポップを信じた想いの強さは、ポップを選んだアバンへの絶対的な信頼感に繋がっている。
 フローラとアバンの絆の深さを感じさせるエピソードだ。

 彼女は祖国カール王国が滅ぼされた時からアバンの死を悟っていたが、それを嘆くよりも彼の想いを継ぐことを重視し、カール王国のわずかな生き残りと共に反旗を翻す時を狙っていたのだ。

 彼の言葉を信じ彼の育てた弟子達を信じればこそ、彼等を中心に据えた作戦を立てることもできる。
 二度目の魔王軍との戦いの指導者として、みんなを導くことができるのだ。

 良いことでも悪いことでも事実をありのままに冷静に受け止め、その中で自分のできる最善を探していくフローラは人を導くのに相応しい理性を持っている。
 女性ながらその姿は実に頼もしく、圧倒されるものがある。

 また、職業は『女王』だが、彼女は実戦でもそこそこ戦える力を持っているらしい。
 迷宮脱出呪文が使え鞭系の武器を使っているところを見ると、賢者並の力を持っていると言える。フローラの登場により、今まで指揮者としてみんなをまとめる立場にいなければならなかったレオナはその大任から解き放たれ、ダイ達と同じくアバンの使徒の一人として戦うことができるようになった。

 それによって、ダイ達に間接的に与える影響は大きいと言える。
 ところで登場が遅いためと、指導者として、そして大人として諭す立場だったため、フローラは一人の女性として素顔を見せるシーンは少ない。

 それがもぉっのすごく残念だが、それだけにアバンとの再会シーン、レオナへの忠告にかこつけてアバンに皮肉を言うシーンなど、細やかな女性らしさが光っている。


 エピローグから判断する限り、彼女はアバンと結婚してカール王国を復興させたようだ。
 二度の魔王軍との戦いを乗り越えようやく結ばれた勇者と姫のカップル――今まで苦労してきた分、幸せになって欲しいものである。
 
 

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